2000年度「五井平和賞」受賞記念イベント

ジェームス・ラブロック博士と若者のパネルディスカッション

ジェームス・ラブロック

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2000年11月26日、東京アメリカンクラブにおいて、第1回五井平和賞受賞者となったジェームス・ラブロック博士の来日を記念し、子どもや若者達を交えたパネルディスカッション形式の企画「ジェームス・ラブロック博士に聞いてみよう!」が開催されました。

日本やアメリカンスクールの中高生を中心に、小学生、大学生を含めた約200名が参加しました。パネルディスカッションでは、ラブロック博士が提唱するガイア理論や地球の現状、そして将来の展望について、若い9名のパネリスト達が博士に直接質問をしたり、博士と意見を交換したりしました。

パネリストの若者達(敬称略)

  • 頌彦尚(佐藤栄学園栄東中学校一年生)
  • ソニア・ヴァンダー・プローグ(アメリカンスクール中等部一年生)アメリカ合衆国
  • 堀川武宏(佐藤栄学園栄え東中学校一年生)
  • 堀口真歩(東京家政学院中学校一年生)
  • 小島行貴(開成中学校二年生)
  • キンバリー・シェアード(アメリカンスクール高等部三年生)アメリカ合衆国
  • 海(カイ)ネプチューン(自宅学習生)アメリカ合衆国
  • ヴイヤーニ・リンゲーラ(東京農工大学研究生)南アフリカ共和国
  • マルコ・アマーティ(筑波大学研究生)イギリス

ラブロック博士が語る「ガイア理論とは?」

「ガイア理論では、地球を様々な種類の生命が環境としっかり結びついて進化した惑星であると見ています。この結びつきから、ガイアは気候や大気、土中そして海中の構成物を生物にとって快適な状態に維持することができる、強力な生命体として出現したのです。ガイアは四十億年近く存在してきましたが、これは宇宙の寿命の三分の一に当たります。

私が最初にガイアと出会ったのは、今から三十五年前にアメリカのNASAから、火星上の生物の存在を見つけるための協力依頼を受けた時でした。

『生命の証を見つけるのであれば、表面上の一点を見るだけではなく、惑星全体を見ましょう。例えば、火星の化学組成を分析することも出来ます。』もし火星に生命が存在するのであれば、生物はその大気を原料として使い、廃棄物を大気に放出しているに違いないと思った訳です。

そして、大気中の気体を生み出す地球表面の生命は大気組成を常に一定に保つようにコントロールしているのだ、という閃きが私の中に起こりました。更には、大気が地球上を非常に速いスピードで循環しているため、全生命がこれによりコントロールされている訳です。そして、天文学者たちは私に言いました。『生命が誕生してから、太陽は二十五%暖まっているにも関わらず、最近の気候はほとんど以前と同じように維持されてきました。』その時、私は地球が常に気候と化学構成物質を一定に保っているということに気が付き始めたのです。こうして、ガイア仮説は私の心に生まれました。

過去三十年間で、地球の気候と物質構成を常に一定にし、生命にとって快適な状態に保っている調整システムが存在していることの証拠が次第に明らかになってきました。ガイア理論は今では主流派と言われる科学者たちによって受け入れられるようになりましたが、彼らは自分たちが間違っていたことを認めず、ガイアという名前を拒否し、この理論のことを『地球システム科学』と呼んでいます。

ガイアとは、科学の単なる一部門以上のものであり、私達が最も美しい惑星の上で生活しているということを実感させてくれます。明らかに、何かが息づいていて、敬意を払う価値があることを示しています。ガイアとは、愛し大事にすべきものであり、私達がガイアへの義務を果たさなければ、それなりの厳しい結果が生じるものであります。ガイアを、いつも私達が親しみを持って呼んでいた地球の愛称として考えてみて下さい。そして、ガイアを身近な存在に感じて下さい。」

ラブロック博士との対話(パネリスト達との質疑応答から抜粋)

Q 人類の地球環境に対する誤った行為は、ガイア理論にどのように関わっていますか?
博士 ギリシャの女神ガイアやインドのカーリという女神の法則のように、実は単純明確なものです。違反すると大変な結果になります。ダーウィンの自然淘汰説によりますと、環境の法則に従わない種は生き残ることができず、環境の法則に従う種のみ生き残ることができます。


Q 博士は『太陽の温度は25%上がった』と話されましたが、ガイアはどのぐらいそのような環境の変化に適応する力がありますか?また、このことは環境問題を含んでいるのでしょうか?
博士 私達もまだその問いに対して十分な回答を見出してはいません。ガイア理論は科学者の間でも最近までそれほどポピュラーなものではなかったので、ガイアシステムの許容度の測定などあまり為されていません。そのため、これまでの地球の歴史に照らし、推測しかできません。例えば6千5百万年前の惑星衝突ですが、それによって恐竜時代が終わりました。そのような衝突で気候が非常に変わり、地球の気温は摂氏10度ぐらい劇的に変わったにも関わらず存続しました。ある意味でそういうも現象がなかったとしたら今日の私達はなかったかも知れません。そして歴史的に見ますとそのような大きな気候の変化が、30回程起こっているのですが、私達はそれを乗り越えてきたのです。しかし、時の経過とともに太陽の温度はどんどん上がり続けています。ガイアは40億年の存在なのですが、私達の考えではあと寿命としては10億年ぐらいしか残っていない。そういう意味では、ガイアは私と同じようにおよそ80歳で人生の5分の4を生きてきた存在だと思います。


Q 異常気象による地球温暖化、大気汚染、森林伐採による環境破壊などで最近地球と人類が良いバランスを保てなくなってきていますが、人類はこれからも生き続けていくことができるのでしょうか?
博士 人類は非常にタフな「種」ですので、これからも長く生き残ると思います。一方、文明は弱くもろいものであり、これまでに少なくとも30の文明が出現しては消滅しています。また現代文明が永遠に続くという保証もありません。もちろん子ども達や孫達のために続いていって欲しいと思いますが。それでも崩壊に対応・準備するということは悪いことではなく、私達の犯した過ちを記録として残しておくことは、むしろ賢明なことだと思います。私達と同じ過ちが後の文明の人類によって再び繰り返されないようにしなければなりません。


Q 地球上には様々な人間がいますが、ガイア理論では人間の心をどう説明されるのでしょうか?
博士 ガイア理論というのは、生命体全体の惑星との関わりを説明するもので、残念ながら、個別の種の性質を説明するものではありません。しかし、言えることは、ガイアと言う大きな生命体に起こっているすべての変化は、個人によって引き起こされているということです。例えば、種に突然変異体が生まれたとします。それが環境を良くする方にも働き得るし、悪くする方に働くこともあり得る。その変化が全体に波及する。個体から起こった変化がシステム全体に及ぶのです。従って、個人のあり方が全体に影響する。ただ幸いなことに、悪いものの方は無くなってしまうわけで、自己調節システムによって生命が維持できるような仕組みになっているのです。


司会 つまり、多くの責任は私達一人一人にあるということですね?
博士 まったくその通りで、ガイアのメッセージとしては一番大切なものです。私達は環境問題について、とかく「あの国が悪い」とか「あの人達が悪い」などと他に責任を求めますが、私達一人一人の行為が全体に影響を及ぼしているのです。そのことは決して忘てはならないのです。


Q ここまで人間の生命について話をしてこられましたが、ガイア理論では動物についての話はないのですか?
博士 もちろんいろいろあります。最近まで、ガイアシステムの中では、私達の役割は、大きな化学循環の一環として動植物を食べ、二酸化炭素を大気に放出するということでした。つまり、私達人類も動植の一員に過ぎず、最大の捕食性動物であり、雑食動物であるということです。人類について何かを考える際には、このことを念頭に置かなければなりません。もちろん、技術革新以降、私達は別の一面を持つようになり、自然に逆らう勢力になってきました。地球自体は約40億年存続してきたのに対し、私達人類は非常に最近登場したのですが、その行動は大気などに変化をもたらすほどの脅威となっているのです。


Q 火星には生命が存在する可能性があると言われていますが、もし生命が存在しているとしたら、これはガイア仮説に当てはまるのですか?
博士 私は、科学者の立場から、火星に生命はないと確信しています。火星は単なる砂漠です。ですから、私は火星上の生命の存在を探査するよりもむしろ、地球をより豊かな環境にするため努力した方が良いのではないかと思います。他の惑星と比べて、改めて地球の美しさと素晴らしさを知ることができます。この地球に住めることは非常に大事で、貴重なことですね。


Q 博士は、地球が一つの生命体であるということの証明として、地球の大気に注目されましたが、どんな状況の時にそれに気付いたのですか? また、それはどんな感じの閃きだったのですか?
博士 科学は芸術と同じように非常に直観的なものです。科学者にどうやって発明したのかと聞いてみますと、「突然頭の中に浮かんできた」という回答がよく出てきます。科学者の中には、数年間かけて自分自身を納得させた上で、10~40年間かけて仲間を説得しようというような人がよくいると思います。そんな風に頭の中に突然浮かんでくるものなのです。学校の教科書などを読んでいますとすべて整然と計画通りにいったように見えますが、本当のところはそうではないのです。


Q どこかで読みましたけれども、科学者は創られるものではなく、生まれてくる人だということを聞いたことがあります。その通りですか?
博士 私もそう思います。科学者はある意味ではアーティストや作曲家のようなものだと思います。生まれつきクリエイティブな人々です。しかし、決してまれな珍しい存在ではありません。アーティストのエリック・ギルさん曰く、哲学者の言葉を引用して、「アーティストは特別な人ではない。逆に、すべての人間は特別なアーティストだ。それぞれ違う形で出てくるものだ」と。科学に何の興味もなければ科学者にはなれないと思います。つまり、生まれつきの興味ということだと思います。


Q 今日のお話を聞いて、ガイア理論に興味を持った若者達が、更にガイア理論について知るためにどういう科学の研究をしたらよいかということについて、何かアドバイスはありませんか?
博士 特に大きな計画を立てる必要はありません。実際、科学は誰にでも触れることができるのです。そう思ってほしいと思います。


司会 最後に何かメッセージをお願いします。
博士 地球と正しく付き合うためには、すべての生物、バクテリア、木、クジラも全部この生命体のシステムの一部であるということを忘れないでいてほしいと思います。最も大事なのは、他人に義務を果たしてほしいと望むのではなく、自分自身が義務を果たすことだと思います。 人類の地球環境に対する誤った行為は、ガイア理論にどのように関わっていますか?
博士 ギリシャの女神ガイアやインドのカーリという女神の法則のように、実は単純明確なものです。違反すると大変な結果になります。ダーウィンの自然淘汰説によりますと、環境の法則に従わない種は生き残ることができず、環境の法則に従う種のみ生き残ることができます。


Q 博士は『太陽の温度は25%上がった』と話されましたが、ガイアはどのぐらいそのような環境の変化に適応する力がありますか?また、このことは環境問題を含んでいるのでしょうか?
博士 私達もまだその問いに対して十分な回答を見出してはいません。ガイア理論は科学者の間でも最近までそれほどポピュラーなものではなかったので、ガイアシステムの許容度の測定などあまり為されていません。そのため、これまでの地球の歴史に照らし、推測しかできません。例えば6千5百万年前の惑星衝突ですが、それによって恐竜時代が終わりました。そのような衝突で気候が非常に変わり、地球の気温は摂氏10度ぐらい劇的に変わったにも関わらず存続しました。ある意味でそういうも現象がなかったとしたら今日の私達はなかったかも知れません。そして歴史的に見ますとそのような大きな気候の変化が、30回程起こっているのですが、私達はそれを乗り越えてきたのです。しかし、時の経過とともに太陽の温度はどんどん上がり続けています。ガイアは40億年の存在なのですが、私達の考えではあと寿命としては10億年ぐらいしか残っていない。そういう意味では、ガイアは私と同じようにおよそ80歳で人生の5分の4を生きてきた存在だと思います。


Q 異常気象による地球温暖化、大気汚染、森林伐採による環境破壊などで最近地球と人類が良いバランスを保てなくなってきていますが、人類はこれからも生き続けていくことができるのでしょうか?
博士 人類は非常にタフな「種」ですので、これからも長く生き残ると思います。一方、文明は弱くもろいものであり、これまでに少なくとも30の文明が出現しては消滅しています。また現代文明が永遠に続くという保証もありません。もちろん子ども達や孫達のために続いていって欲しいと思いますが。それでも崩壊に対応・準備するということは悪いことではなく、私達の犯した過ちを記録として残しておくことは、むしろ賢明なことだと思います。私達と同じ過ちが後の文明の人類によって再び繰り返されないようにしなければなりません。


Q 地球上には様々な人間がいますが、ガイア理論では人間の心をどう説明されるのでしょうか?
博士 ガイア理論というのは、生命体全体の惑星との関わりを説明するもので、残念ながら、個別の種の性質を説明するものではありません。しかし、言えることは、ガイアと言う大きな生命体に起こっているすべての変化は、個人によって引き起こされているということです。例えば、種に突然変異体が生まれたとします。それが環境を良くする方にも働き得るし、悪くする方に働くこともあり得る。その変化が全体に波及する。個体から起こった変化がシステム全体に及ぶのです。従って、個人のあり方が全体に影響する。ただ幸いなことに、悪いものの方は無くなってしまうわけで、自己調節システムによって生命が維持できるような仕組みになっているのです。


司会 つまり、多くの責任は私達一人一人にあるということですね?
博士 まったくその通りで、ガイアのメッセージとしては一番大切なものです。私達は環境問題について、とかく「あの国が悪い」とか「あの人達が悪い」などと他に責任を求めますが、私達一人一人の行為が全体に影響を及ぼしているのです。そのことは決して忘てはならないのです。

Q ここまで人間の生命について話をしてこられましたが、ガイア理論では動物についての話はないのですか?
博士 もちろんいろいろあります。最近まで、ガイアシステムの中では、私達の役割は、大きな化学循環の一環として動植物を食べ、二酸化炭素を大気に放出するということでした。つまり、私達人類も動植の一員に過ぎず、最大の捕食性動物であり、雑食動物であるということです。人類について何かを考える際には、このことを念頭に置かなければなりません。もちろん、技術革新以降、私達は別の一面を持つようになり、自然に逆らう勢力になってきました。地球自体は約40億年存続してきたのに対し、私達人類は非常に最近登場したのですが、その行動は大気などに変化をもたらすほどの脅威となっているのです。


Q 火星には生命が存在する可能性があると言われていますが、もし生命が存在しているとしたら、これはガイア仮説に当てはまるのですか?
博士 私は、科学者の立場から、火星に生命はないと確信しています。火星は単なる砂漠です。ですから、私は火星上の生命の存在を探査するよりもむしろ、地球をより豊かな環境にするため努力した方が良いのではないかと思います。他の惑星と比べて、改めて地球の美しさと素晴らしさを知ることができます。この地球に住めることは非常に大事で、貴重なことですね。


Q 博士は、地球が一つの生命体であるということの証明として、地球の大気に注目されましたが、どんな状況の時にそれに気付いたのですか? また、それはどんな感じの閃きだったのですか?
博士 科学は芸術と同じように非常に直観的なものです。科学者にどうやって発明したのかと聞いてみますと、「突然頭の中に浮かんできた」という回答がよく出てきます。科学者の中には、数年間かけて自分自身を納得させた上で、10~40年間かけて仲間を説得しようというような人がよくいると思います。そんな風に頭の中に突然浮かんでくるものなのです。学校の教科書などを読んでいますとすべて整然と計画通りにいったように見えますが、本当のところはそうではないのです。


Q どこかで読みましたけれども、科学者は創られるものではなく、生まれてくる人だということを聞いたことがあります。その通りですか?
博士 私もそう思います。科学者はある意味ではアーティストや作曲家のようなものだと思います。生まれつきクリエイティブな人々です。しかし、決してまれな珍しい存在ではありません。アーティストのエリック・ギルさん曰く、哲学者の言葉を引用して、「アーティストは特別な人ではない。逆に、すべての人間は特別なアーティストだ。それぞれ違う形で出てくるものだ」と。科学に何の興味もなければ科学者にはなれないと思います。つまり、生まれつきの興味ということだと思います。


Q 今日のお話を聞いて、ガイア理論に興味を持った若者達が、更にガイア理論について知るためにどういう科学の研究をしたらよいかということについて、何かアドバイスはありませんか?
博士 特に大きな計画を立てる必要はありません。実際、科学は誰にでも触れることができるのです。そう思ってほしいと思います。


司会 最後に何かメッセージをお願いします。
博士 地球と正しく付き合うためには、すべての生物、バクテリア、木、クジラも全部この生命体のシステムの一部であるということを忘れないでいてほしいと思います。最も大事なのは、他人に義務を果たしてほしいと望むのではなく、自分自身が義務を果たすことだと思います。

 

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