
はじめに
公益財団法人 五井平和財団では、「平和の創造」を目的とした様々な活動の一環として、平和に資する青少年教育事業を展開してきました。
世界規模で、20年以上にわたって毎年実施してきた国際ユース作文コンテストの参加者の多様性に着目し、世界の若者たちの平和についての現状認識や問題意識、平和に貢献するために取り組みたいことなどをアンケート形式で聞き取り、そのデータから今の若者たちの意識の傾向を探りました。
本アンケート調査の結果は、当財団が今後実施する教育プログラムの参考になると同時に、各国の政策決定者をはじめ、教育関係者、青少年支援団体など、様々な方々に、有益なリソースとしてご活用いただけると考えています。
アンケート調査の実施方法
2020年度実施した予備調査に引き続き、2021年4月から8月にかけて、2021年度国際ユース作文コンテストに応募した世界161ヵ国28,217人の全参加者に対し、オンラインの「平和に関する世界の若者の意識調査」への任意の協力を呼びかけたところ、23.1%にあたる149ヵ国6,538人(内、日本からは239人)より回答が得られました。
回答者の概要
回答者の地域別の内訳は、日本を含むアジア・大洋州が26ヵ国3,475人(53.2%)、北米・西欧が16ヵ国173人(2.6%)、中南米が25ヵ国1,193人(18.2%)、東欧・中央アジアが28ヵ国542人(8.3%)、中東が13ヵ国224人(3.5%)、アフリカ41ヵ国が905人(13.8%)、その他の地域が21名(0.3%)となりました。(回答者の国の地域区分は表0-1の通り)
回答者の性別の内訳は、グラフ0-1の通り、男性24.9%、女性74.3%、その他0.8%でした。
また、回答者の年齢分布は、グラフ0-2の通りで、全体の52.3%を占めました。
地域 | アンケート回答者の国 |
---|---|
アジア・大洋州 | インド、インドネシア、オーストラリア、韓国、カンボジア、シンガポール、スリランカ、ソロモン諸島、タイ、中国、日本、ニュージーランド、ネパール、パキスタン、パプアニューギニア、バングラデシュ、東ティモール、フィジー、フィリピン、ブータン、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、モルディブ、モンゴル、ラオス |
北米・西欧 | アイルランド、イタリア、英国、オーストリア、オランダ、カナダ、スウェーデン、スペイン、デンマーク、ドイツ、フランス、米国、ベルギー、ポルトガル、マルタ、ルクセンブルク |
中南米 | アルゼンチン、ウルグアイ、エクアドル、エルサルバドル、ガイアナ、グアテマラ、コスタリカ、コロンビア、ジャマイカ、セントビンセントおよびグレナディーン諸島、チリ、ドミニカ共和国、トリニダード・トバゴ、ニカラグア、ハイチ、パナマ、パラグアイ、バルバドス、ブラジル、ベネズエラ、ベリーズ、ペルー、ボリビア、ホンジュラス、メキシコ |
東欧・中央アジア | アゼルバイジャン、アルバニア、アルメニア、ウクライナ、ウズベキスタン、カザフスタン、北マケドニア、ギリシャ、キルギスタン、クロアチア、ジョージア、スロバキア、スロベニア、セルビア、タジキスタン、チェコ、トルクメニスタン、ハンガリー、ブルガリア、ベラルーシ、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モルドバ、モンテネグロ、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、ロシア |
中東 | アフガニスタン、イエメン、イラク、イラン、オマーン、カタール、サウジアラビア、シリア、トルコ、バーレーン、パレスチナ、ヨルダン、レバノン |
アフリカ | アルジェリア、アンゴラ、ウガンダ、エジプト、エスワティニ、エチオピア、ガーナ、カーボベルデ、カメルーン、ケニア、コモロ、コンゴ、コンゴ民主共和国、ザンビア、シエラレオネ、ジンバブエ、スーダン、セイシェル、赤道ギニア、セネガル、ソマリア、タンザニア、チャド、チュニジア、トーゴ、ナイジェリア、ナミビア、ブルンジ、ベニン、ボツワナ、マダガスカル、マラウイ、マリ、南アフリカ、南スーダン、モーリシャス、モザンビーク、モロッコ、リベリア、ルワンダ、レソト |
※地域の区分については、国連統計部(UNSD)が統計のために用いている区分に準拠しつつ、地政学的要因に加え、歴史的・文化的背景も考慮した。


アンケート結果と分析
各問の結果分析にあたっては、世界全体、日本のほか、地域ごとのデータをまとめ、共通点や相違点等の傾向を比較しました。
問1:あなたは今回も含めて作文コンテストに何回参加したことがありますか。
世界全体でも、日本に限った場合でも、作文コンテストに複数回応募している一定数のリピーターがおり、平和やより良い未来の創造に関心の高い層であることが分かった。


若者たちにとって一番大切な平和は「自然を含む地球の平和」
問2:あなたにとって一番大切な平和とは何ですか。
子どもと若者の比較
子ども(14歳以下)、若者(15~25歳)共に「自然を含む地球の平和」が自分にとって一番大切と考える者が最も多かった。(子ども47.8%、若者40.3%)
2番目に多かった回答は、子どもが「世界人類の平和」(20.8%)であったのに対し、若者は「自分の心の平和」(28.6%)であった。ここから、年齢が上がるほど、より内面を重視する傾向を読み取ることができる。


世界と日本の比較
日本は、「自分の心の平和」が10.5%で、世界全体(27.3%)、アジア・大洋州(28.0%)と比較して少ない。逆に「自分の家族/学校や地域/国の平和」の合計は24.2%で、世界全体(8.2%)と比較して多かった。
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昔に比べて世界は平和になったか否か、地域によって受け止めに違い。日本の若者の多くは平和になったと回答
問3:昔に比べて、世界は平和になったと思いますか。
世界全体で見ると、昔に比べて「平和になった」と楽観的に考える者(44.3%)が「昔の方が平和だった」と悲観的に考える者(37.3%)を若干上回った。
日本では、楽観的な回答(59.4%)が悲観的な回答(13.8%)を大きく上回った。
地域別に見ると、北米・西欧、中南米、東欧・中央アジアの3地域については、昔に比べて世界は「平和になった」と楽観的な回答の方が多かった(北米・西欧47.4%~東欧・中央アジア59.8%)。
一方、アジア・大洋州、中東、アフリカの3地域については、「昔の方が平和だった」と悲観的な回答の方が多かった(中東41.1%〜アフリカ48.8%)。
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いまの世界の平和の度合は40~60点と評価
問4:いまの世界は平和だと思いますか。平和の度合いに点数を付けるとすれば、何点だと思いますか。
回答者が付けた10点単位の点数のうち、0~30点を低(悲観的)、40~60点を中、70~100点を高(楽観的)と大別した。
昔に比べて平和になったか否か(問3)の見方に係わらず、現状については40〜60点が多かった。その中にあって、東欧・中央アジアは比較的点数が高かった(70点以上の回答が27.0%)
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約半数は生きている間の完全な世界平和実現に否定的な一方で、1/4は平和になると信じている
問5:あなたはあなたが生きている間に、世界が完全に平和になると思いますか。
世界全体では、自分が生きている間に、世界が完全に平和になると「思う」と答えた者が23.7%であったのに対し、「思わない」と答えた者が52.1%に及んだ。
日本は「思う」が9.6%、「思わない」が72.8%と、悲観的な回答が多かった。
地域別では、「思う」と答えた割合は、北米・西欧8.7%、中南米12.2%と低かった。
一方で、問4で「昔の方が平和だった」(現状に悲観的)が多かった中東およびアフリカが、本問ではそれぞれ36.7%、38.7%が「完全に平和になると思う」(将来に楽観的)と答えている点は注目に値する。
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「科学技術の進歩による生活の質の向上」「教育の質の向上」「医療や福祉の促進」を実感
問6:世界の状況で、良くなったと思う点は何ですか。(3つまで選択可)
世界の現状で、良くなったと思う点は、世界全体で、1位「科学技術の進歩により生活の質が向上した」(47.0%)、2位「教育の機会が増えた/教育の質が高まった」(45.3%)、3位「医療や福祉が促進された」(39.0%)であった。
地域別で一番多かった回答は、中南米とアフリカが「科学技術の進歩により生活の質が向上した」で、その他の地域は「教育の機会が増えた/教育の質が高まった」であった。
日本は、「戦争や紛争が減った」が最も多く(44.8%)、特徴的であると言えよう。
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世界では「人権の抑圧や差別をなくすこと」、日本では「戦争や紛争をなくすこと」が世界平和に向けた最重要課題と回答
問7:世界が平和になるために、解決しなければならない重要な課題は何だと思いますか。(3つまで選択可)
世界が平和になるために、解決しなければならない重要な課題は、世界全体で、1位「人権の抑圧や差別をなくすこと」(54.3%)、2位「戦争や紛争をなくすこと」(41.9%)、3位「貧困や飢餓をなくすこと」(38.1%)であった。
その他の回答では、中南米の第2位に「質の高い教育をみんなに提供すること」、アフリカの第2位、東欧・中央アジアの第3位に「各国の政情が安定し、国際協力が進むこと」が入った点は、地域的な特徴と言える。
問6の良くなったと思う点、問7の課題ともに上位の回答が、どの地域も概ね同じ項目であったことから、世界の若者に共通した世界観が伺える。
日本は「戦争や紛争が減った」「戦争や紛争をなくすこと」が問6・7それぞれ1位の回答であったことから、日本人にとって「平和=戦争・紛争がない状態」という概念が、平和教育の結果として根づいていると考えられる。
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自分の国は平和な方だと「思う」トップはブータン、「思わない」トップはアフガニスタン。日本は9割が「思う」と回答
問8:自分の国は諸外国と比べて平和な方だと思いますか。
自分の国は諸外国と比べて平和な方だと「思う」「思わない」の割合は、世界全体では、ほぼ同じだが、特に「思う」が多いのが北米・西欧と東欧・中央アジアで、「思わない」が多いのが中東であった。
国別では、自分の国は平和な方だと「思う」と答えた割合が多い国、「思わない」と答えた割合が多い国、それぞれの上位12ヵ国は表8-1および表8-2の通りであった。
日本は「思う」が88.7%と非常に多く、全体の7位であった。
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順位 | 国名 | その国の回答者に占める割合 |
---|---|---|
1位 | ブータン | 100.0% |
2位 | ウズベキスタン | 93.8% |
3位 | トルクメニスタン | 93.8% |
4位 | ガーナ | 92.9% |
5位 | シンガポール | 90.2% |
6位 | ザンビア | 89.0% |
7位 | 日本 | 88.7% |
8位 | タンザニア | 83.7% |
9位 | ブルガリア | 80.0% |
シエラレオネ | 80.0% | |
イタリア | 80.0% | |
コスタリカ | 80.0% |
順位 | 国名 | その国の回答者に占める割合 |
---|---|---|
1位 | アフガニスタン | 100.0% |
2位 | ミャンマー | 94.7% |
3位 | ベネズエラ | 89.5% |
4位 | シリア | 88.2% |
5位 | カメルーン | 85.7% |
6位 | トルコ | 85.0% |
7位 | イラン | 84.6% |
8位 | レバノン | 81.8% |
9位 | タイ | 80.0% |
10位 | ナイジェリア | 75.4% |
11位 | イラク | 74.2% |
12位 | ジャマイカ | 72.7% |
平和でない国の重要課題は「人権と自由を守る」「政情が安定し、治安を守る」「戦争と紛争をなくす」
問9:あなたの国がもっと平和になるために、解決しなければならない最も重要な課題(自国に関して)は何だと思いますか。
自国がもっと平和になるために、解決しなければならない最も重要な課題は、「男女の不平等など、あらゆる差別や偏見をなくすこと」と答えた者が、世界全体で15.1%、日本では30.1%と最も多い回答だった。
また、世界全体で「気候変動や自然災害への対策を行うこと」は1.6%、「環境や生態系の破壊を食い止めること」は2.2%と問題意識が低く、「核兵器・原子力発電を廃絶すること」は世界全体で0.4%と最も低く、日本でも3.3%にとどまった。
問8で自分の国は諸外国と比べて平和な方だと「思わない」と答えた上位12ヵ国については、最も重要な課題は「戦争や紛争をなくすこと」「人権と自由を守ること」「政情が安定し、治安を守ること」の3つに集中した。
地域別では、中南米の第1位が「質の高い教育をみんなに提供すること」となったのは、特筆に値する。
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国名 | 最も重要な課題 | その国の回答者に占める割合 |
---|---|---|
アフガニスタン | 戦争や紛争をなくすこと | 80.0% |
ミャンマー | 人権と自由を守ること | 34.7% |
ベネズエラ | 政情が安定し、治安を守ること | 47.4% |
シリア | 戦争や紛争をなくすこと | 64.7% |
カメルーン | 政情が安定し、治安を守ること | 28.6% |
トルコ | 人権と自由を守ること | 25.0% |
イラン | 人権と自由を守ること | 30.8% |
レバノン | 政情が安定し、治安を守ること | 27.3% |
タイ | 人権と自由を守ること | 36.7% |
ナイジェリア | 政情が安定し、治安を守ること | 26.0% |
イラク | 政情が安定し、治安を守ること | 19.5% |
ジャマイカ | 社会における、あらゆる形の暴力をなくすこと | 54.5% |
8割の若者が日常的に平和について周りの人と話す
問10:平和について周りの人と話すことはありますか。
平和について周りの人と話すことが「よくある」「時々ある」と答えた者の合計が世界全体で79.5%、「ほとんど/全くないが、話してみたいと思う」も含めると9割近い者が肯定的に答えており、作文コンテスト参加者の平和への関心度が高いことを示している。
特に、アフリカが「よくある」50.9%、「時々ある」39.4%と一番多い。
一方、日本は「よくある」10.0%、「時々ある」50.2%で、世界全体と比べても平和について話をする割合が2割程低い。
問8で自分の国は諸外国と比べて平和な方だと「思う」と答えた国と「思わない」と答えた国を比較すると、自国が平和だと思わない国々の方が、平和について周りの人と話す割合が平均して多いことがわかった。
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平和な人間関係を重視し、「他人への思いやり」や「話し合いでの問題解決」など実践
問11:平和のためにやっていること、またはやってみたいことはありますか。(当てはまるものをすべて選んでください)
平和のためにやっていること、やってみたいことはあるか、当てはまる回答をすべて選んでもらったところ、「他人に対して思いやりを持つ」「人との争いを避け、話し合いで解決する」「人に迷惑をかけず、人の役に立つことを心がける」が、世界全体、地域別、日本の何れでも上位を占め、身近な人間関係における心がけが重視されていることがわかる。
特に北米・西欧は、8割を超える者が、上記トップ3の項目を選んだほか、「ゴミ拾いやリサイクルなど、できることをやる」「環境保護に協力する」がそれぞれ72.3%と、全体的に他地域と比較して行動指向が強いことがわかる。
なお、「環境保護に協力する」を選んだ者は、世界全体では61.5%であったが、日本では38.9%にとどまった。
問10で平和について話すことが一番多かったアフリカは、「平和運動に参加する」を選んだ者が50.9%おり、地域別で最も多かった。
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平和に貢献するためには「教育や学びの場」「自分の意見を発表するチャンス」「同世代とのつながり」が必要
問12:平和に貢献するために、あなたにとって必要なものは何ですか。(当てはまるものをすべて選んでください)
平和に貢献するために必要なものは何か、当てはまる回答をすべて選んでもらったところ、世界全体では、1位「教育、学びの場」(76.5%)、2位「自分の意見を発表するチャンス」(69.3%)、3位「同じような思いを持った同世代の人とのつながり」(68.5%)、4位「金銭的な援助」(51.3%)、5位「先駆者とのつながり」(45.2%)という結果になった。
日本や各地域においても、同じ回答が上位3位までを占めることから、世界の若者たちにとって、平和に貢献するために必要なものは、「教育、学びの場」「自分の意見を発表するチャンス」「同じような思いを持った同世代の人とのつながり」の3つに集約されることがわかった。
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終わりに
本調査では、世界の若者の平和についての意識の傾向を概観するため、以下のねらいをもって問いを立て、アンケートを構成しました。
問2では自分の心の平和から、家族、学校・地域、国、人類、地球の平和に至るまで、平和を考える際の意識の広さを探りました。
問3では過去を振り返り、問4では現在を観て、問5では未来を展望し、世界の平和に向けた推移を、どのように捉えているかを見ました。
問6では世界が良くなった点、問7では未だ解決しなければならない点は何かを尋ね、若者の問題意識を探りました。
また、問8・問9では自国に関して、どのような認識をもっているかを尋ね、特に自分の国は平和ではないと思っている国の若者が課題だと感じていることを聞き取りました。
問10・問11では若者たちの平和意識が、どのような行動に現われているかを探り、問12では彼らが平和に貢献するために必要だと感じているものは何かを聞き取りました。
当財団では、今後も、毎年の「国際ユース作文コンテスト」実施に合わせて、「平和に関する世界の若者の意識調査」を継続的に実施し、世界の子ども・若者の生の声を集めることで、彼らが平和の担い手として未来を創造していくための支援につなげたいと考えています。
ダウンロード
平和に関する世界の若者の意識調査(アンケートフォーム)TEL: 03-3265-2071(10:00~17:00 土日祝日を除く)
Eメール : info@goipeace.or.jp
公益財団法人 五井平和財団「平和意識アンケート」事務局