2011年10月17日~20日の4日間、パリのユネスコ本部において第7回ユネスコ・ユースフォーラムが開催されました。本フォーラムには、世界127ヶ国を代表する210人の若者のほか、NGO・市民団体、国際機関、学界、産業界からの参加者が集い、「How Youth Drive Change(いかに若者が変化を推進するか)」をテーマに活発な討議が行なわれました。五井平和財団は、ユネスコユースセクションの要請を受け、主要パートナーとしてフォーラムに参加し、プログラム制作に協力しました。
ユネスコ・ユースフォーラムは隔年に開催されるユネスコ総会に先駆けて開催され、様々なグローバルな課題に関し世界の若者が意見を交換し、共に解決策を探る貴重な機会となっています。若者たちの意見や提案は提言書としてユネスコ総会に提出され、その協議事項として組み込まれます。今回のユースフォーラムでは、若者の社会変革への取り組み、政治参加、雇用、暴力からの保護といった問題が話し合われました。
五井平和財団は、フォーラムの公式プログラムの一部として10月19日の夜の部で2時間半のカルチャーイベントを主催したほか、最終日の20日にクロージングセレモニーを企画提供しました。また、後発開発途上国や恵まれない立場にある若者の参加を援助しました。会期中催されたユースエキスポでは、財団インフォメーションブースを設置し、連日多くの参加者と交流しました。
カルチャーイベント
10月19日、五井平和財団は「インスピレーションの夕べ」と題したイベントをユネスコ本部の総会会場にあたる第1会場で開催しました。若者の積極的な社会貢献を鼓舞し、地球共同体としての意識を高める主旨で企画されたこのプログラムには、各国政府代表部や一般のゲストも含め数百名が参加しました。
最初にピラール・アルバレス・ラソ ユネスコ事務局長補が参加者を歓迎し、五井平和財団の協力に対し感謝を述べました。続いて、西園寺裕夫理事長が財団を代表して挨拶に立ち、大震災後の日本での若者の積極的な働きを紹介するとともに、世界中で変革を推進する若者の活躍にエールを送りました。基調講演はベルリン自由大学で起業家精神を教えるギュンター・ファルティン教授で、シンプルをモットーにすれば誰でも起業家になれることを説き、若者の新しい発想による起業を奨励しました。
続いて登場した3人の若手活動家、社会起業家は、それぞれの革新的な活動を紹介しました。26歳のメロディー・フセイニさんは、ユースリーダーを育てる教育啓発活動を世界100カ国以上で展開し若者の社会参加を支援しています。この日もパワーあふれるトークで会場の若者にインスピレーションを与えました。ラビー・ズレイカットさんは、母国ヨルダンの社会的・経済的格差をなくすため、体験観光という新しい社会起業モデルをつくりました。都会の人々が田舎の貧しい地域の伝統的な生活文化を楽しく体験することで地元の人々に誇りと自信が生まれ、対等な関係が築かれていく様子は感動を呼びました。ニプン・メータさんが始めたサービススペースは、ボランティアが運営しボランティアの輪を広げてゆくユニークな組織です。「Giftivism(ギフト主義)」という造語を用い、これまでの物質主義から奉仕と信頼とつながりを基本にした新しい経済システムへのシフトを提唱しました。
次の部では、国際ユース作文コンテストなど五井平和財団がユネスコと協力して推進しているユース関連のプロジェクトを紹介しました。これまでの作文コンテスト受賞者3名、ロシアのアンジェリナ・ユディナさん(2010年度「子供の部」最優秀賞)、ルーマニアのルシアーナ・グロスさん(2006年度「若者の部」最優秀賞)、ルワンダのアリーン・カバテンデさん(2010年度「若者の部」最優秀賞)が登場し、受賞後のそれぞれの生き方や活動の展開について話しました。また、財団のヨーロッパ代表が、ユネスコとの新規共催事業として企画しているユースプロジェクト・コンペティションについて紹介しました。これは、持続可能なより良い世界を築くための若者主導のプロジェクトを応援し育成していこうというものです。
最後は、美しい地球映像とヴァイオリン演奏を融合したケンジ・ウィリアムスさんの「ベラ・ガイア」のパフォーマンスが会場を魅了しました。宇宙飛行士が地球を見たときの感動を疑似体験しつつ、海洋汚染、森林破壊など今の地球の姿を五感で感じることができるマルチメディアショーです。後半には五大陸を代表する若者がステージに加わり、人類一人一人が地球進化の担い手として共通の責任と使命を果たしていくことを謳った『生命憲章』を朗読し共感を呼びました。
このイベントの司会を務めてくれたアメリカの女優で国連ユース・チャンピオンのモニーク・コールマンさんは、出演者のスピーチやパフォーマンスに大変感銘を受け、素晴らしいコメントでプログラム全体を盛り上げてくれました。また、五井平和財団の活動に共鳴し、今後の協力を約束してくれました。
イベント後のレセプションでも和やかな交流が続き、多くの若者や参加者がからフォーラムのプログラムの中で一番良かった、素晴らしかったという感想が寄せられました。
フラッグセレモニーとピースポール贈呈式
ユースフォーラム最終日、各国代表の若者たちは長時間に及ぶ討議の末、最終提言書の採択にこぎつけ、イリナ・ボコバ ユネスコ事務局長とヘップバーン ユネスコ総会議長に提出しました。そこで、クロージングセレモニーの進行を担当する五井平和財団が紹介され、フラッグセレモニーへと移りました。各国の若者がステージに招き上げられ世界の国旗を手にし、声を合わせて「May Peace Prevail on Earth」と平和のメッセージをくり返すという自然展開となり、皆で国境を越えた一体感を味わいました。
若者たちが歓喜に溢れて旗を振る中、財団の西園寺会長、理事長からボコバ事務局長にピースポールが贈呈されました。この特別な七面体のピースポールには6つの国連公用語の平和メッセージに加え、フォーラム会期中に各国の若者が母国語で「平和」と記したカラフルで創造的なピースプレートが貼付されています。ボコバ事務局長は、喜んでこの記念碑を受け取り、自らも母国語のブルガリア語で平和と書きプレートをはめ込みまれました。完成したピースポールは、ユネスコ本部の敷地内に常設される予定です。
このように五井平和財団がユネスコ・ユースフォーラムの成功に貢献できたことは、ユネスコとのこれまでのパートナーシップにおいても画期的なことであり、今後も若者のエンパワメントやESD(持続発展教育)、平和の文化の推進に向けてユネスコとの協力を深めていきたいと思います。