【開催報告】第1回ESD日本ユース・コンファレンス


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2月16日(日)、「ESD日本ユース・コンファレンス」が東京で開催されました。
(主催:文部科学省 日本ユネスコ国内委員会 五井平和財団 協力:岡山市)

このコンファレンス(会議)は、2014月に開催されるユネスコと日本政府主催の「ESDに関するユネスコ世界会議」の一環となる「ユース・コンファレンス」のプレ会議として、日本でESDを実践する若者を対象に行ったものです。開催前日、東日本は記録的な大雪に見舞われましたが、全国から様々な分野でESD活動をする若者49名が参加し、活発なディスカッションを展開していきました。参加者の活動紹介は、こちら(リストPDF)から。

ESDとは?共通認識の確認からスタート

この会議は、未来のより良い社会を目指し、分野やセクターを超えて互いの実践事例やアイデアを共有し、学び合うこと、「国連ESDの10年」の最終年となる本年以降もESDのイニシアティブを推進できるような若者のネットワークをつくることを主な目的にしています。この目的から、参加者は学び手ではなく、ESDに関する経験と実績を持つリソースパーソンという位置づけのもと、参加者自身が中心となって進められるプログラムを行いました。そのプログラムは、対話を中心とした「オープニング・ダイアログ」、「ピア・ラーニング・ワークショップ(分科会)」、「アクション・プランニング・セッション」で構成されました。

この日に参加したESD実践者の活動分野は、教育、環境、国際理解、人権、健康福祉、業・食、町づくりなど広範囲にわたり、年齢も18歳から35歳までの若者を対象としているため、高校生、大学生などの学生やNPO・NGO、職員、教員、企業人など様々です。そこで、最初の「オープニング・ダイアログ」では、少人数のグループに分かれ、「私が考えるESDとは」をテーマに、ESDに関する認識を共有することから始めました。

途中、文部科学省でESDを推進している国際統括官付ユネスコ振興推進係長の江幡忍氏による基調講演を挟み、ESDの公式な定義なども確認しながら互いの意見を共有していきました。

他者の経験や意見を自らの学びに

続いて、「ピア・ラーニング・ワークショップ(分科会)」として、各自の活動における課題や関心事の近い者同士に分かれ、ワークショップを2回行いました。

1回目のワークショップのテーマは、「ESDとしての環境・エネルギー教育の実践と課題」、「地域コミュニティの持続発展に向けたESDの実践と課題」、「地球市民を育むための実践課題」、「エンパワメントと自己肯定感につながる実践手法」などです。

2回目のワークショップでは、各自の取り組みを普及、促進するための方法や仕組みについてディスカッションする機会としました。テーマは、「ESDの認知度を高める方法と新たな層の巻き込み方」、「ESD活動を継続するための課題と解決方」、「自身の取り組みをより発展させるための他セクターとの連携」、「ESD実践者同士の情報共有と協働」の4つ。

これらのディスカッションを通じて互いの悩みや課題を共有し、一緒に考え、解決を目指すことにより、仲間作りができると共に、各自が活動する現場で活かせるヒントを見つける機会にもなったと思われます。

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つながりを協働へ

今回の会議で生まれた参加者同士のつながりが継続されていくためには、協働するものがあることが望まれます。そこで、次のプログラムでは、今後1年以内に会場の参加者と一緒にやってみたい企画に対して参加を呼びかける「アクション・プランニング・セッション〜ESD実践者同士の協働〜」を行いました。

 提案されたのは12企画。「ESDを実践する企業のネットワーク構築」、「乳幼児から思春期まで一貫して自己肯定感を育む教育」、「農業と他産業のコラボレーションによる持続可能な産業の創出」などバラエティに富んでいました。企画内容が各提案者から紹介されると、協力したいと思う企画を各自で選び、企画提案者と共に「企画を実行に移すために必要なもの」、「企画を実現するための今後のステップ」というテーマでアイデアや意見を出し合い、企画を練り上げていきました。限られた時間の議論でしたが、今後、企画が実際に展開できる可能性が生み出せたのではないかと思います。

 対話のプログラムはここで終了。11月に岡山市で行われるユース・コンファレンスに参加する日本代表の選出へ移りました。

ユース・コンファレンスへ向け、日本代表を選出

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岡山市のユース・コンファレンスは全て英語で行われるため、参加者には語学のスキルが求められますが、立候補者は10名におよび、彼らは英語と日本話で自らの活動を土台とした同コンファレンスへの抱負をスピーチしました。投票の結果、企業で、学校や他企業と世界を変える新しい教育を実践している秋永名美さん、大阪のNPO法人の小学校に勤める中尾有里さんに決まり、2人は、この日の成果を11月の会議に反映していくと語られました。この後、冒頭から会議を見守っていた岡山市ESD世界会議推進局の浅井孝司局長と小西美紀主任から、参加者全員にさらなるESD活動推進への期待が語られました。

 そしてクロージングは、一人ずつ今後のESD活動に対するコミットメント(宣言)を行いました。「価値ある情報をインプットする機会が持てた」、「多分野・幅広い年齢層だからこその発見や学びがあった」など、感想を交えながら、この場で得た学びやつながりを活動の場へ活かしていこうという力強いコメントを聞くことができました。

 朝10時から夕方6時までの長時間かつタイトなプログラムでしたが、参加者の皆さんは笑ったり、他者の言葉に真剣に耳を傾け相槌を打つなど、その表情からは参加意識の高さが伺えました。また、閉会後も会話を続けたり、連絡先を交換し合うなど、交流する姿が多く見られました。

 五井平和財団では、この日の成果を踏まえ、11月のユース・コンファレンスへ向けて準備中です。ESDを実践する若者たちが世界から集い、持続可能な社会をつくるための多角的な話し合いの中で起こる創発に期待が膨らみます。