【開催報告】第2回ESD日本ユース・コンファレンス、ESD日本ユース・プラットフォーム会合

ユース世代のプラットフォーム構築に向けて(全体概要)

五井平和財団では、平成27年度日本/ユネスコパートナーシップ事業を文部科学省より受託し、「第2回ESD日本ユース・コンファレンス」ならびに「ESD日本ユース・プラットフォーム会合」を実施しました。本事業は、ユネスコ創設70周年記念事業にも位置づけられています。 (主催:文部科学省、日本ユネスコ国内委員会、五井平和財団/協力:一般社団法人 グローバル教育推進プロジェクト(GiFT))

「第2回ESD日本ユース・コンファレンス」は、2015年10月10(土)・11日(日)の2日間にわたり、東京で開催され、様々な立場で教育・啓発活動に携わる、18~35歳のESD(持続可能な開発のための教育)実践者50名が各地から集まり、より良い未来をつくるための教育、またユース(若者)たちの連携について話し合いました。このコンファレンスは、第1回ESD日本ユース・コンファレンス(2014年2月・東京)、ユネスコESDユース・コンファレンス(同11月・岡山市)の成果などを踏まえ、日本の若者たちが主体的にESDの発展に関わるよう、若者同士のネットワークの強化と、意見や情報の交換・発信を行える場となるプラットフォームの構築、さらには世界の若者のプラットフォームとの連携の模索などを目指して行われました。そのため合宿形式による、17時間を超えるプログラムとなりました。参加者の活動紹介は、こちら(リストPDF)から。

そして、「ESD 日本ユース・プラットフォーム会合」は、2016年1月23日(土)に、東京で開催されました。

参加者全員で大きな円をつくり、一人ひとりが気持ちを共有した「チェックアウト」の時間

この会合は、「第2回ESD 日本ユース・コンファレンス」で生まれた9つのプロジェクトの向上と、ESD(持続可能な開発のための教育)に関わる若者同士がつながり、意見や情報の発信や交換などを行う場となるプラットフォームの発展を目指すものです。参加者はこれまでのESD日本ユース・コンファレンスの参加者と、彼らの周囲でESDを実践する若者たちを含む34名でした。会合は、真剣かつ和やかな雰囲気の中で進んでいきました。

第2回ESD日本ユース・コンファレンス(2015年10月10・11日/東京)

合宿1日目 「出会う」「つながる」

コンファレンスのプログラムは、この日に集った参加者が「出会う」、「つながる」、「つくりだす」という、段階的に進んでいく3部構成で行われました。

オリエンテーション 

最初の「出会う」がコンセプトのプログラムでは、ユネスコ国内委員会委員も務める西園寺裕夫理事長が開会挨拶の中で、ユネスコのユースへの期待は非常に大きいと述べた後、参加者同士が自己紹介を兼ねながら緊張を解きほぐすためのアイスブレイク、そして、文部科学省国際統括官付ユネスコ振興推進係主任の岡本彩氏と千葉大学エグゼクティブ・ディレクターの岩本渉氏によるスピーチが行われました。

岡本氏は、「今年、『ESDの10年』の後継プログラムとしてグローバル・アクション・プログラム(GAP)が始まりました。ESDはつながっていくものです。皆様一人一人が一つの池だとしたら、今回のユース・コンファレンスはESDを深める場であり、滴みたいなものです。この滴が皆様の池に落ちていくことで、水面に輪を描いて広がり、その滴が浸透していきます。この2日間を大切に過ごし、ご自身が活躍する場に戻って、さらに水面の輪を広げていただきたいと思います」と、本コンファレンスへの期待を語りました。

次に、文部科学省在籍時から長年に亘り、同省やユネスコ本部でESDの推進を先導してきた岩本氏が、「世界の全人口の中で10歳から24歳の若者が占める割合は25%ですが、アフリカの場合、平均寿命が日本よりもずっと短いため、若者の位置づけが非常に大きいわけです。ユネスコにとって、ユースはユネスコの理想を実現するための独立した主体であり、パートナーです。もちろん社会からの便益の享受者という面はありますが、ユースを平和と持続的発展のための変化の主体と見ています。」などと述べました。

その後、参加者の中から、岡山市の世界会議にも参加したNPO法人箕面こどもの森学園スタッフの中尾有里さんが、その時の体験を踏まえ、「私たちは、共に手を取り合い、地球上の若者たちをエンパワメント(力を与えること)し、動員していく必要があると思います」と呼びかけました。

ここからのプログラムは、ファシリテーターの進行によって、少人数でのダイアログ(対話)形式で進められました。最初のダイアログは、参加者の意識の共有を図るために、スピーカーの方々の話を聞いた上で、「私たちはなぜ、ここにいるのか」、「私たちに期待されるものは何か」というテーマで行われました。


アイスブレイクは、声を出さずに名前やニックネーム、本コンファレンスに期待することなどを書いた紙を手に自己紹介


文部科学省の岡本彩氏

Mr. Iwamoto

千葉大学の岩本渉氏

Ms. Nakao

昨年世界会議に参加した中尾有里さん

ESDきっかけ物語~私の活動紹介

続いて、「つながる」プログラムへ。

彼らは、4つの部屋に分かれ、「自分史」を共有。各自がどんな人生を歩んできたかを語り、聞くことで互いを知り、つながりを深めていきました。

その後、ESDに関わるきっかけとなった出来事や人との出会い、それぞれに取り組んでいるESD活動の紹介に移りました。その中には、互いの参考になりそうな成功例、活動上の課題や力を貸して欲しいこと、自分や自分のネットワークがESDの活性化に貢献・協力できることなども盛り込まれ、意見やアイデアの交換が活発に交わされました。

仲間と共に学び合う時間 ピアラーニング・ワークショップ

夕食を挟み、1日目の最終プログラムとなったのは、有志5人が自ら提案・主催した分科会です。次の5つのテーマで、「ピアラーニング」という参加者同士が学び合う形式で行われました。

参加者が主催したピアラーニング・ワークショップ
  • 「食」を考えるワークショップを学校等でどのように実践していくか
  • 大学教育を考えるワークショップ ~ピア・コーチングの手法を用いて~ 
  • 子どもだって話し合いで解決できる! ~対話する学校~ 
  • 「分断状態の解決」という視点から「平和」について考えてみる ~日本と北朝鮮を事例に~ 
  • 「持続可能な社会」をつくるためのユース・プラットフォームのあり方とは

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ピアラーニング。「子どもだって話し合いで解決できる!~対話する学校~」のひとコマ

 

合宿2日目 「つくりだす」

個人的な経験やそれぞれの活動など、様々な対話をじっくり行い、つながりを深めた参加者たちの2日目は、「つくりだす」プログラムへ入りました。

まず、本コンファレンスの事前のオンライン・ディスカッションで、どのような議論が行われたのかを共有。その後、8つのグループに分かれ、次の問いについて考えました。 「今後、ESDを盛り上げていく上で、私がしたいことは何か」、「今後ESDを盛り上げていく上で一緒にやりたいことは何か」。 一人一人がESD実践者という立場で考え、自由に話し合いながら、彼らは、思いつくアイデアをどんどん模造紙に書き出し、手を加えながら大きく育てていきました。

その後、参加者全員で大きな円をつくり、一人ずつ、他の参加者と一緒に、あるいは周りのユースを巻き込みながら、今後やりたいことを発表しました。一部を紹介すると、「普段の活動の中で感じることを集めて共有し、アドバイスし合ったり、外に発信していきたい」、「何をやったらいいのかわからない人たちが学べる場をつくりたい」、「各地域のESDの取り組みについて意識調査をしたい」など、「ネットワークづくり」と「学び合いの場」というキーワードに集約される発表が多く見られました。

9つのプロジェクトチームが発足

この「一人一人がやりたいこと」をより明確化し、具体的に取り組めるよう、内容が近い者同士が集まって、プロジェクトチームをつくりました。

発足したチームは9つ。各チームは、内容を詰めたり、実施スケジュールに落とし込むなど、具体的なアクションプラン(行動計画)を練り上げていきました。そして、それぞれの企画内容をスライドや模造紙にまとめて発表し、他の参加者たちからの質問や意見を受けながら、プロジェクトを磨き上げていきました。
参加者がつくり出した、9つのプロジェクト
  1. ESDコーディネーター育成
  2. おらが町 産学官(みんな)で作っぺし (宮城版)
  3. 勝手に表彰事務局
  4. ESDシンクタンク ―実践者あたま☆スッキリ―
  5. Globalな学びの場をつくる
  6. ESD×教科教育
  7. ESD つながりマップ
  8. ESDユース情報局
  9. 学びの市場♪

以上で2日間のプログラムは終了し、最後に、今後に向けた各自のコミットメントや思いを発表し、閉会となりました。

 

ESDへの強い思いで9つのプロジェクトが練り上げられていく

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プログラムの最後は、今後の活動宣言や今の気持ちを一人ずつ発表

ESD日本ユース・プラットフォーム会合(2016年1月23日/東京)

プログラムは、ここに至るまでの経緯や、第1回、第2回のESD日本ユース・コンファレンスの振り返りから始まり、文部科学省国際統括官付・ユネス振興推進係主任の岡本彩氏によるプラットフォーム構築への期待を込めた挨拶、参加者の自己紹介へと進んでいきました。

自己紹介は、「私のESD活動」、「会議後どのような活動をしたのか」、「今だから思うコンファレンスの価値」、「今日への期待」が書かれたシートを使い、初参加の人とも、互いの活動などが時間をかけずにわかり合えるよう工夫されています。

次に行われたのは、昨年10月の日本ユース・コンファレンスで誕生した9つのプロジェクトの進捗報告です。発表はプロジェクトごとに行われ、「ESD情報局」は、ESD関連の情報配信用にFacebookなどのオンラインツールを立ち上げ、対面型のイベントも開始。「ESDシンクタンク」は、2015年10月の日本ユース・コンファレンスの後、参加者に「ESD実践で困難に感じること」を聞き、その集計と分析結果を発表。ほかの7プロジェクトも同様に進捗を報告しました。プロジェクトごとの報告が終わるたびに、参加者たちから質問や意見、提案などが積極的に伝えられ、これらは各プロジェクトの向上へ役立てられていきます。

どんなプラットフォームが必要?

次に、プラットフォームについて考えるダイアログ(対話)へ移りました。ここまでのプログラムを通して、自分が感じたことを見つめながら、プラットフォームに反映させたい大切な要素を考え、それを共有しながら、ダイアログのテーマを絞り込んでいきました。

その結果、「オンラインでつながる」、「オンラインだけでなく、実際に会えるようにもする」という実践面と、「多くの人を巻き込めるプロジェクトを考えていく」、「ESD関連プロジェクトの管理」という理論面の4テーマに決まると、グループに分かれて話し合いが行われました。そして、今日のプログラムを通じて、自分にとってプラットフォームとは何か、プラットフォームへの貢献の仕方や活用の方法などを言語化し、全員で共有したところで会合は終了となりました。

会合後は、ピアラーニングの時間を設け、9プロジェクトの一つ「学びの市場」が、学校教育の中に隠れているESDの種を見つけるワークショップを行い、主催する側、参加する側の両者が共に学び合う体験をしました。
ESD日本ユース・コンファレンスは、回を重ねるごとに参加者のつながりが強くなっていくのを感じます。そのユースのつながりの力は、ESDの普及、そしてESDの活動を支えるプラットフォームの発展に反映されるものと確信します。


五井平和財団では、これからも引き続き、ESDを実践するユースのプラットフォーム構築と強化をサポートしていきたいと考えています。


楽しい空気の中で対話は活発に。ESDを実践する経験から、様々な意見が行き交います

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自分にとってのプラットフォームとは何かを発表。一人一人の意見が、プラットフォームの発展へつながっていきます