2018年度ユース・シチズン・アントレプレナーシップ・コンペティション 入賞者決定

社会の様々な問題解決に世界各地で取り組む15~35歳の若者が、それぞれのアイデアやプロジェクトを競い合う「ユース・シチズン・アントレプレナーシップ・コンペティション」は4回目を迎えました。

本年度は、93カ国からより良い社会をつくるための「ベストアイデア部門」に419件、すでに社会に良い影響を与えている「ベストプロジェクト部門」に232件の応募があり、一般投票の得票数によって決勝に進出した10人の中から社会起業の専門家により上位3賞が決定し、また、一般投票で最も支持を獲得した「ピープルズ・チョイス賞」が選出されました。

受賞者の発表は、2018年10月6、7日にドイツ・ベルリンの自由大学で開催されたアントレプレナーシップ・サミットで行われ、ベストアイデア部門の最優秀賞受賞者、シャディ・アルズビさんは、自国ヨルダンからの旅費をクラウドファンディング(インターネット経由で募る寄付)で工面して出席し、その優れたアイデアは会場に集う社会起業家700人から称賛されました。

また、社会起業に必要なノウハウが無料で受講でき、さらに仲間と自由に意見交換ができるウェブサイト上の「アントレプレナーシップ・キャンパス」には新たに約7000人が登録し、登録者総数は4万4000人を超えました。そのうち1万8000人以上が実際に受講し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて学びを深めています。

本プロジェクトのウェブサイト(英語)では、受賞した全てのアイデアとプロジェクトをご覧いただけます。

ベストアイデア部門

最優秀賞
ウォーター・ワット / Water Watt

受賞者:シャディ・アルズビ (24歳/男性/ヨルダン)

水道パイプの水流の運動エネルギーを利用して発電する装置を発明。二酸化炭素を出さず、装置の部品の60~65%を再生プラスチックでつくることでプラスチック廃棄物の削減も目指す。

10cm~2mのパイプに設置可能で、 10cmのパイプの場合、太陽電池の2倍の600Wの電力を出力でき、小型で設置しやすく、地下でも使用できる。シリア人難民キャンプを訪れた際に、安価な電力とプラスチック廃棄物の削減の重要性を実感し、半年かけて発明。現在は、ヨルダン・バルカ県の水道公社の許可を受け、実証段階に入っている。

ピープルズ・チョイス賞
心肺蘇生法(CPR)を全ての人に / Educating Every Person on Cardiopulmonary Resuscitation(CPR). A Potential Life Saver Technique

受賞者:クラティカ・グプタ (19歳/女性/インド)

心肺蘇生法(CPR)を学校のカリキュラムに取り入れ、全ての人がCPRを習得することで、心肺停止状態で救命措置が必要な人々の命を救うアイデア。

心肺停止状態では、1分ごとに救命率が7~10%下がるため、医療従事者が到着するまで脳への酸素供給の維持が重要。これを誰もができることで、より多くの人の命を救うことができる。文化的背景から、公共の場で女性への蘇生処置が妨げられることなどがないよう啓発教育も行う。

 

ベストプロジェクト部門

最優秀賞
“ワリディ”-バラの花 / “Waridi” is a Swahili word meaning rose flower

受賞者:ベノランダ・クボカ (31歳/女性/ケニア)

スワヒリ語でバラの花を意味するワリディは、性とジェンダーに基づく暴力(SGBV)に苦しむケニアの女性を支援し、SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」に取り組むプロジェクト。

女性への自衛手段の指導や、性暴力被害者への精神・社会的ケアの提供のほか、サッカーやダンスを用いた若者による若者のためのリーダーシップ育成、人権活動家の育成など多岐に亘る支援活動を行っている。

ピープルズ・チョイス賞
スイフトヒール / SWIFTHEAL

受賞者:シャーゼブ・カーン (16歳/男性/インド)

スイフトヒールは、けがや手術による傷口の余分な体液を吸引することで回復を早める携帯電子機器。傷口に密着し、体液を吸収する層と体液を留め吸引する2層のパッドと、圧力を調整できる吸引器のセットで、市販の同等器具は約3万円と高価で7日間しか使用できないのに対し、2000円ほどで購入でき、パッドを交換すれば何度でも使用できる。

自身が膝の手術の回復に1年もかかり、高価な市販器具を購入する余裕がなかったことをきっかけに、低所得者層にも購入できるスイフトヒールを完成させた。

 

共催:五井平和財団、アントレプレナーシップ財団、デジタル・エキスパーツ・ユナイテッド