【開催報告】中高生キャリア支援プログラム「私のコンパス」(スピーカー:鬼丸昌也 認定NPO法人テラ・ルネッサンス理事・創設者)

鬼丸昌也

より良い世界をつくるために、国内外の様々な分野で課題に取り組む方々から、その活動や今に至るライフストーリーを聞き、多様な価値観・考え方・選択などを学びながら、自分と世界の未来について考えるきっかけを提供する、中高生キャリア支援プログラム「私のコンパス」を8月10日(水)にオンラインで開催しました。

国内各地、オーストラリア、シンガポールから中高生約40人が参加し、認定NPO法人テラ・ルネッサンス創設者の鬼丸昌也氏から、アフリカで長年取り組んでいる子ども兵の問題、大学時代にNPO創設に至った理由など、世界に対する新しい視野が広がり、将来への示唆となる話を聞きました。

テーマ

こうして僕は世界を変えるために一歩を踏み出した
―その小さな「積み重ね」があなたの未来を動かす

資金や人脈、語学力もなかった僕がNGOを設立したのは大学4年生でした。
そこから約20年、全国各地で平和や地雷、皆さんと同世代の子ども兵に関する講演活動を続け、また、カンボジア、ウガンダなどで地雷除去や元子ども兵の支援事業を立ち上げてきました。その過程で気づいた「一歩を踏み出すこと」の大切さを、体験を通じてお話しします。

スピーカー

鬼丸昌也(認定NPO法人テラ・ルネッサンス 理事・創設者)

プロフィール

1979年福岡県生まれ。立命館大学法学部卒。高校在学中にアリヤラトネ博士(サルボダヤ運動創始者/スリランカ)と出会い、「全ての人に未来をつくりだす能力がある」と教えられる。2001年初めてカンボジアを訪れ、地雷被害の現状を知り、「全ての活動はまず『伝える』ことから」と講演活動を始める。同年10月、大学在学中に全ての生命が安心して生活できる社会の実現を目指すテラ・ルネッサンスを設立。
著書『僕が学んだゼロから始める世界の変え方』(扶桑社)ほか。

僕らは微力だけど、無力ではない

僕らは、7カ国で紛争や災害で苦しむ人々の自立支援をしています。

元子ども兵の支援活動は2004年にウガンダ北部で、武装勢力に12歳の時に誘拐され、心に深い悲しみを抱えた元子ども兵との出会いがきっかけでした。23年にもおよぶウガンダ北部の内戦で、子ども兵にするために誘拐されたのは3万6000人。子どもは素直で洗脳しやすく、また、武器が小型軽量化され、使いやすくなっていることも要因です。

紛争の原因の一つが、私たちの手元にあるスマートフォン、タブレット、パソコンに使われるレアメタルや、貴金属の金やダイヤモンドなどの資源を巡るものです。1万キロ離れたアフリカの紛争の原因は、特定の誰かではなく、私たちの暮らしとつながっています。ならば、争いの原因とは関係のないレアメタルを使ったスマートフォンを選ぶなど、僕らの選択や日頃の考え方次第で、世界を変えていくことができるはずです。僕たちは微力ですが、決して無力ではありません。

あなただから、できることがある

テラ・ルネッサンスの原点は、僕が大学4年生で初めてカンボジアを訪れた時に、地雷被害の現状を知り、何とかしたいと思ったことでした。でも、寄付できるお金はない、英語も話せない自分がとてもショックでした。

しかし、できないことを一つずつ取り除いていくと、その人だからできることが必ず見つかります。僕にとってそれは、多くの人に地雷問題を伝えることでした。最初に話したのは10人。21年で21万人に伝えることができました。そして、現在、日本人スタッフ25人、外国人スタッフ100人、年間予算3億円規模の支援活動ができる組織になりました。

大事なことは、小さなことでもいい、疲れたら休んでもいいから続けていくこと。皆さんのやり方で、ペースで、是非社会と関わってください。

質問タイム

参加者 ハイテク技術が開発され、レアメタルが要らなくなったら戦争は終わり、子ども兵も解放されると思いますか。

鬼丸 そう思います。しかし、人間が争いをする心を持っていれば、別の理由で争うでしょう。ですから、戦争をしない仕組みや法律、資源を巡る争いが起こらずに済む技術をつくること、そして、人の心から争いを暴力で解決しようとする心をなくすことが大事だと思います。

参加者 大学生になったら現在運営している、日本で暮らす外国人をサポートする高校生団体をNPO法人にしたいのですが、大人になるまで待つべきだと言われてしまいます。

鬼丸 テラ・ルネッサンスは大学4年の時に設立しましたが、NPOの法人格を取るまでに5年かけました。法人格は活動の継続や拡大のために必須ではなく、寄付を集めたり活動の支援者を集めるなどできることはあります。大事なのは、継続できる規模や関わり方はどういうことかを考え、今できることを一つ一つやっていくこと、そして、自分の感覚ややりたいという気持ちを大事にしていれば、その希望が叶うタイミングがきっと訪れます。

参加者の感想

紛争、アフリカ、子ども兵について深く考えたことがなく他人事でしたが、紛争の原因が先進国にあることを知り、衝撃を受けました。今日の1時間半で、私は世界に対する新しい視野を手に入れ、自分の考え方が変化しました。
最近、将来の夢や目標が分からなくなっていましたが、今日の言葉を胸に、自分にできることをつかみたいです。
高校の先輩が、こんなに世界で活躍していることを知り、すごく刺激を受けました。講演中の数々の名言にも背中を押されました。