【実施報告】「GOALs ~3校協働SDGsチャレンジ~」首都圏の中高生が「福島の未来」に向けて協働!

首都圏3校のユネスコスクール、晃華学園中学校高等学校、東京立正中学校・高等学校、麗澤中学・高等学校との連携企画「GOALs~3校協働SDGsチャレンジ~」の2022年度の8カ月に亘る活動が、昨年12月に終了しました。

企画に参加した、SDGsや持続可能性に関心を持つ3校の生徒有志16人は、東日本大震災から11年が経過した福島の「いま」や、オーガニックコットンで復興に取り組む活動について知ったことをきっかけに、福島の持続可能な環境や未来に貢献したいと、昨年5月から様々な活動にチャレンジしてきました。

その活動は、11月に環境省主催の「いっしょに考える『福島、その先の環境へ。』チャレンジアワード2022」で「優秀賞:福島県知事賞」を受賞。予想外の嬉しい評価をいただくこともできました。8カ月間の彼らの活動と成長を感想と共に紹介します。

GOALs~3校協働SDGsチャレンジとは

五井平和財団が推進している、ESD(持続可能な開発のための教育)に携わる若者のコミュニティ、「ESD日本ユース」メンバーの若手教員から「生徒たちが学校を超えて学び合い、協働することでさらなるSDGsの推進へつなげたい」という声を受け、一昨年(2021年度)にスタートしました。

2022年度は、昨年3月に開催した「ローカルSDGsキャンパス・ミーティング」(『平和の創造』92号掲載)で講師を務めてくださった、福島県いわき市でオーガニックコットンの栽培・商品販売を通じて、復興に取り組んでいる(株)起点 代表取締役の酒井悠太氏、「ESD日本ユース」の社会人メンバー3人の協力を得て、生徒、教師、社会人、五井平和財団が一緒になって、毎月1回活動を行ってきました。

首都圏の中高生が「福島の未来」に向けて協働!

【5〜7月】福島とオーガニックコットンについて独自に学ぶ

生徒たちは、起点・酒井氏の講演動画の視聴をはじめ、震災から11年を経た現在の福島やオーガニックコットンについて自分たちで調べることから始めました。

復興における様々な課題のほか、綿花は他の植物に比べて土壌からの放射性物質の移行係数が低いこと、有機栽培をすることによって環境に配慮した新しい産業となることなどを学びました。

【8月】福島とコットン生産者の思いをリアルに知る

さらに理解を深めるため、酒井氏を東京に招き、被災から現在までの道のり、オーガニックコットン商品や復興への思いを直接聞くと共に、様々な疑問を投げかけました。この時を境に、生徒たちの自分ごと化が加速しました。

“震災はほとんど記憶になく、酒井さんの福島のリアルな話に驚くばかりだった。東日本大震災を教科書の中の出来事にしてはいけないと思った”

【9月・10月】できること考え、行動を始める

「自分たちに何ができるのか」を議論し合い、「福島のいまと、オーガニックコットンの魅力や可能性を広く伝えよう」と結論を出し、9月には各校の文化祭で、福島に関するパネル展示やオーガニックコットン製品を販売、好評を得ることができました。しかし、多くの生徒は、自分たちの言葉で上手に伝えられないもどかしさを感じており、「福島に行きたい」という声が自発的にあがりました。

10月、酒井氏が活動するいわき市へ。海岸線につくられた堤防や街を実際に見て歩き、起点の畑では綿花の収穫、スタッフの方へのインタビューなどを通じて、有機栽培の大変さ、福島の素晴らしさと可能性を、身を持って知ることができました。

“起点の皆さんをはじめ、多くの人が復興のために様々な活動をしている。もっと知りたいし、何か力になりたいと改めて思った”

文化祭で販売するオーガニックコットン手ぬぐいづくり。

自然の中で初めてのコットン収穫を楽しむ。

【11月】次のチャレンジと嬉しい評価

いわき市での体験によって、さらに理解を深め、自信を付けた生徒たちは、11月に40の市民団体が参加した千葉県柏市の「ラコルタ柏フェスティバル」にブースを出展しました。

来場者に福島やコットンについて説明。

独自に制作したPR動画も活用し、約100人の市民に、今の福島、オーガニックコットンの魅力や商品の価値、背景にあるストーリーを紹介しました。

自分の言葉で伝え、理解、賛同してもらえた喜びはひとしおだったようです。オーガニックコットンの手ぬぐいなども、半日で40枚以上販売しました。

“初対面から約半年でブースを出展し、説明できるまで皆が成長できたのはすごい。生徒も大人も皆が真剣に考え、活動してきた結果だと思う”

この活動は、環境省主催「いっしょに考える『福島、その先の環境へ。』チャレンジアワード2022」で優秀賞(福島県知事賞)を受賞する機会にも恵まれました。表彰式に招待され、訪れた双葉町では、震災遺構や帰還困難区域、東日本大震災・原子力災害伝承館、復興産業拠点などを見学。当時のままの街並みに衝撃を受けると同時に、福島の未来に貢献したいという思いをさらに強くしました。メディア取材も受け、GOALsの活動は地元紙の1面に大きく掲載されました。

【12月】活動を振り返る

これまでの活動を振り返るミーティングで、思い思いに感想を述べました。

“社会問題を自分ごととして捉え、考えるだけでなく、行動に移す大切さを学んだ”
“学校も年齢も違い、はじめはとても緊張したが、徐々に何でも言い合えるようになり、最後は互いを高め合える、一生の宝の仲間ができた”
“璧も大切だけど、できないことがあってもいいから、自分の個性や能力を生かし、できることを一生懸命取り組むことの方が大切だと気づいた”

最終回、酒井氏と共に活動を振り返る。

晃華学園中学校の佐藤駿介教諭は「3校のユネスコスクール、五井平和財団、社会人の方と共に、学校の枠を超えた新しい形の学びを実現できました。

生徒は、学校や家庭の外にも世界が広がっていることを実感し、広い視野が持てるようになったと思います」と、コメントをくださいました。

今後について

学校や年齢、環境も異なる生徒たちは、回を重ねるごとに、皆の意見を尊重しながらも、自らの意見を伝え、チームにできることは何かを考え、自分の特性を生かせるようにどんどん変わっていきました。

年が明け、次年度も福島をフィールドに3校が協働する計画づくりが始まりました。これからもGOALsでは、若者たちが協働して、社会課題やSDGsに取り組み、多くの体験や学びを通じて平和な未来の担い手となるサポートを続けてまいります。