【開催報告】中高生キャリア支援プログラム「私のコンパス」(スピーカー:新井和宏 新井和宏 非営利株式会社eumo代表取締役)

新井和宏

より良い世界をつくるために、国内外の様々な分野で活躍する方々のライフストーリーや活動から多様な価値観・選択などを学び、自分と世界の未来について考えるきっかけを提供する、中高生キャリア支援プログラム「私のコンパス」。

春休みの2023年3月28日(火)、持続可能な新しい経済の仕組みづくりに取り組んでいる新井和宏氏をスピーカーに招き、国内各地、シンガポール、カナダ、オーストラリアなどから参加した中高生49人が、お金、仕事、幸せな生き方について学びました。

テーマ

幸せな人は 「お金」と 「働く」を知っている

お金とは何でしょうか?
私は、仕事を通じて、恩師からいただいたこの人生の問いとずっと向き合ってきました。
お金を知ることはとても大切なことです。
幸せになるために役に立つお金。
でも、お金があれば必ず幸せになるのではありません。
働けば手に入るお金。
でも、手に入れるものはお金だけではありません。
その違いを理解することは、社会に出ていく時に必ず必要になります。
私のライフストーリーをお話ししながら、その時のために、「お金とは何か」という
探求の時間をご一緒したいと思います。

スピーカー

新井和宏(非営利株式会社eumo代表取締役)

プロフィール

1992年住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)入社。2000年世界的な資産運用会社バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現・ブラックロック・ジャパン)入社。ファンドマネージャーとして数兆円を動かすが、大病とリーマン・ショックを機に、これまでの数式に則った投資、金融市場のあり方に疑問を持つようになる。
2008年11月、社会に必要とされる「いい会社」を応援する鎌倉投信株式会社を元同僚と創業。投資信託「結い2101」の運用責任者として活躍。鎌倉投信退職後の2018年9月、人々の「共感」をベースとする経済と社会の実現を目指し、株式会社eumo(ユーモ)を設立。

「お金」とは何か

新井さんは、小学5年生の時に父親が交通事故に遭い、長い間、お金で苦労をしてきたこと、夜間の大学に通いながら昼間働いていた会計事務所で恩師と呼べる人物と、生涯の問い「お金とは何か」に出会ったことなど、自身のライフストーリーから話してくれました。

大学を卒業後、大手金融会社、世界最大の外資系資産運用会社に勤め、金融マンとして高収入を得るも、ストレス性の難病を発症し、退職。今後について悩んでいる時、ある本と出会い、「儲けるための投資から、応援するための投資をしよう」と方向転換。人生の大きな転機についても語ってくれました。

続いて、「お金とは何か」について、様々な切り口で話してくれました。

「価格と価値は似ていますが、価格は、お店が提示するもので、価値は自分で見出すもの。価格が安い・高いではなく、価値を見出す力を身に付けることが大切です。お金は貯めるものではなく使うもので、肝心なのは『使い方』。世の中の役に立つ、人が喜ぶ、自分の将来に役立つなど、使い方を考えてください。

人生の目的はあくまで幸せになることです。お金はそのための手段であることを忘れないでください。お金の構造は『集める』と『渡す』で、それは家庭も国も世界も同じです。そして、人間社会の中で循環しています。価格の安さを求めすぎる風潮は、海外で児童労働などの犠牲を生み、社会を悪くします。お金を使うことは投票と同じです。私たちのお金の使い方次第で社会は変わっていきます」と述べました。

「働く」とは何か

次に、お金とも人生とも密接に関わる「働く」ことへ話が進みました。

「働くことはお金を手に入れるだけではなく、人に喜ばれたり、人から必要とされることであり、幸せになるための大切なプロセスです。そして、お金は自分ができないことを代わりにやってくれた人への『ありがとう』の対価でもあります。仕事には、お母さんの家事のように、お金では測れない価値を持つものがあることも覚えておいてください。

年収400万円と800万円の幸福度はさほど変わらないという調査結果があります。幸せに働くとは、どういうことでしょうか。つまらないと思って毎日働くのか、楽しいと思って働くのか。まずは、自分が何を楽しいと感じるのかを知ってください。そして、仕事がつまらない時、この仕事で何が得られるかを考え、面白いものに変えていける力を身に付けてください」

終盤は参加者へエールが送られました。

「生きがいがあると人生は輝きます。『稼ぐこと、得意なこと、好きなこと、社会の役に立つこと』の四つが重なる部分が生きがいと言われています。どれからスタートしてもいいので、皆さんも生きがいを見つけてください。皆さんには、能力、時間、お金という三つの資産があります。能力や適性は一つだと決めつけず、可能性がたくさんあることを忘れないでください。そして、多くの人と出会い、いろいろな仕事があることを知ってください。

これからの社会は、AIなどのテクノロジーによって分散した働き方が可能になり、個々の才能を発揮して、起業したり、いろいろな仕事をする時代になります。逆に言えば、やりたいことができるようになり、幸福度も上がっていくでしょう。AIやChatGPTが苦手な、人間の持つ創造性やコミュニケーション能力、共感力などを鍛えて、自分の未来をつくり上げてください」

最後に参加者へ、「貧しい人とは、何もない人ではなく、欲しがる人のことである」と、ホセ・ムヒカ元ウルグアイ大統領の言葉が贈られ、終了となりました。

参加者の感想

職業に対する考え方を変えることができました。仕事に関して自分の可能性、やりたいこと、どのように感謝されたいかをしっかり意識していきたいです。
最近、お金が何なのかわからなかったり、お金に悩まされていたので、今回お金についてよく知ることができ、上手に生きる方法も学べました。