
2022年度に続き、2校のユネスコスクール、晃華学園中学校高等学校(東京都調布市)、麗澤中学・高等学校(千葉県柏市)と連携し、福島の持続可能な環境や未来に貢献することを目的とする学校協働プロジェクト『GOALs~学校協働SDGsチャレンジ~』を実施しました。
2023年度は、SDGsに関心を持つ同校の中学2年から高校2年の生徒有志11人が、4月から9カ月間に亘って活動。福島県いわき市でオーガニックコットンの栽培から商品販売までを手がける株式会社起点と「ESD日本ユース」メンバー(*)の協力を得て、オリジナルタオルの製作と販売を行いました。
「東日本大震災を教科書の出来事にしない!」を合言葉に活動を開始した11人は、実際に福島を体感するため、4月下旬にいわき市を訪れ、語り部の方や起点のスタッフの方々から震災やオーガニックコットンについて学び、豊かな自然の中で綿花の種まきを体験しました。
ESD日本ユース/ESD(持続可能な開発のための教育)に関わる、教員・NPOスタッフ・行政職員・学生など、多様なセクターのメンバーで構成される全国規模のコミュニティ。五井平和財団では2014年以来、このコミュニティの構築と発展に取り組んでいます。
オリジナルタオルを通して
福島への思いを伝えたい
5月から8月にかけて、いわき市での体験で感じたことなどを共有しながら、福島のために何ができるか、話し合いを重ねました。「震災を風化させない」、「福島の豊かな自然を伝えたい」。彼らは、オリジナルハンドタオルの製作と販売を通じて、多くの人にその思いを伝えることに決めると、起点の方々の協力を得て、タオルの色の選定、ロゴや包装用紙のデザイン製作に取り組みました。
ジレンマから自信へ
完成したタオルの販売活動は、9月に両校の文化祭からスタート。しかし、熱心に話を聞いてくれる方もいれば、あまり関心を示さない方もいるなど、ブースに立ち寄る人の反応は様々でした。
「伝えたいことが、上手に伝えられない」と、試行錯誤する中で、英国発のナチュラルコスメブランド「LUSH」の店舗で働く皆さんから「価値の伝え方」を学ぶ機会を得ることができました。これをきっかけに、自分たち独自の視点やいわき市での体験を軸に、商品の魅力や福島への思いを言語化できるようになり、10月以降に出展した東北の復興を応援する都内のイベントなどでは、ブースを訪れた人々に生き生きと話をする姿が見られました。
そして11月、この活動は環境省主催「いっしょに考える『福島、その先の環境へ。』チャレンジアワード2023」で、環境大臣賞を受賞し、授賞式に出席するため、再び福島県を訪問。県外の若者が福島の未来を考え、積極的に発信している活動は素晴らしいと、講評をいただき、喜びと大きな自信につながりました。

タオルの色を話し合う生徒たち。

福島の桃・山・花・空・海をモチーフに5色に染められたハンドタオル。包装には環境に配慮して紙を使用。綿花のイラスト、GOALsのロゴ文字、福島の未来へ向けて若者が走り出す姿が描かれている。
それぞれの成長
12月には、9カ月間の活動を全員で振り返りました。
「自己肯定感が低かったが、自分のアイデアが認められることで自信がついた」「挑戦することの大切さを学んだ」「自分とは違う視野で物事を見る大切さに気づけた」「意見を好きなだけ言えるGOALsは奇跡の場だと思う」「どの商品にも思いが込められているのだと分かり、物を大切にしようと思った」など、お互いの変化と成長が共有されました。
後日、生徒たちは担当教員と共に1年間の活動と受賞報告のために五井平和財団を表敬訪問し、西園寺裕夫理事長から、「中学生・高校生でこのような活動を成し遂げる皆さんは素晴らしい。この経験を生かして、これからも福島や日本の未来のために活躍してほしい」とのエールが送られました。
現在、次年度の学校協働プロジェクトの計画づくりが始まっています。今後も次世代の平和の担い手づくりに取り組んでまいります。