福岡講演録

龍村仁

映画監督『地球交響曲』

テーマ

21世紀に求められる霊性(スピリチュアリティ)とはなにか

プロフィール

1940年兵庫県生まれ。63年京都大学文学部美学科卒業後、NHKへ入局。2000年、有限会社龍村仁事務所を設立。ドキュメンタリー映画『地球交響曲』シリーズは、地球の未来に多くのメッセージを与える作品として、全国各地で自主上映され、観客動員数を伸ばし続けている。現在、最新作『地球交響曲 第七番』を制作中。著書『地球(ガイア)の祈り』(角川学芸出版)ほか多数。
龍村仁事務所 www.gaiasymphony.com

講演概要

映画『地球交響曲』の出演者たちはみな、とりたてて“宗教的”な人ではない。にもかかわらず、みな深い霊性の持ち主だということができる。それはなぜなのかを、出演者たちの具体的なエピソードや言葉を通してお話してみたいと思っている。

講演録

冒頭の西園寺理事長による挨拶と財団の活動紹介の後、龍村監督の講演がスタート。

「私が思う“霊性とは何か”という、結論を先に申し上げましょう。それは、『自分を超えた大いなる生命とのつながりの中で生かされている』ということの実感や体感です。これは、悟りをひらいた聖人や宗教家だけではなく、全ての人間の中にあるものだと思っています」

観客から見れば、特別に見える『地球交響曲』シリーズの出演者も、会えば普通の人ばかりだという。ただ、壁にぶつかったとき、自分の殻を破ろうと前進するか、楽な道を選ぶかの違いを除いては。
「自分で最大の努力をしたとき、本当に必要であれば、自分を超えた深いところで通じ合っているものが、時空を超えて現れると思います」

制作過程での奇跡といえる数々の体験から得た、「大いなる生命とのつながりの中で生かされている」という感覚は、次第に確信へ変わっていったそうです。
「例えば、第三番の出演者、ラッセル・シュワイカート氏の場合。彼とは初対面でしたが、来日時のわずかな時間に出演の承諾を得られ、あとは彼からの連絡を待つ状態に。しかし予定の時期になっても連絡は来ません。縁がないのかと思いながら、ある日、知人のオフィスを訪ねると、なんとそのビルのエレベーターホールに彼が立っていました。彼は、私の名刺をなくしてしまったというのです。こういう体験は映画制作を通してたくさんあります」

シュワイカート氏は、アポロ9号の乗組員。月面着陸のための最後のテストを兼ねた宇宙遊泳中、トラブルにより、一人宇宙の静寂の中で残され、そこで、特別な体験をします。
「彼は、暗い闇の中に浮かぶ美しい地球を眼下にしたとき、“ここにいるのは私であって、私ではない。地球上の全生命、そして地球そのものを含めた我々なのだ”と感じ、涙が溢れてきたそうです。
つまり、地球という生命、そして地球上に存在する人類を含めた全生物の生命は、過去、現在、未来の時空を越えて、全てつながっているという感覚です。この体感をもつことは、霊性の原点のように思います」

最後は、撮影中の最新作『地球交響曲 第七番』のテーマについて語ってくださいました。
「危機的状況の中で、地球と、地球上の全ての生命が持つ自然治癒力が発揮されるカギは、私たちの“心”です。では、私たちは、何に気づき、何を捨てて、何を取り戻すべきなのか。キーワードは、肉体の寿命など、変えられないことを受容する落ち着き、変えられることを変える勇気、その二つの違いを見分ける英知。つまり・心や魂・です。 心や魂が、どれだけ全てのものにつながり、どれだけ大切なものであるかが見えてくると思います」