「平和に関する世界の若者の意識調査」を実施 ~149ヵ国の若者が回答~

平和についての意識調査の結果

公益財団法人 五井平和財団では、世界規模で、20年以上にわたって毎年実施してきた国際ユース作文コンテストの参加者の多様性に着目し、世界の若者たちの平和についての現状認識や問題意識、平和に貢献するために取り組みたいことなどをアンケート形式で聞き取り、そのデータから今の若者たちの意識の傾向を探りました。

2020年度実施した予備調査に引き続き、今回、2021年度の作文コンテストの全参加者(5~25歳)に本調査への任意の協力を呼びかけたところ、その4分の1にあたる149ヵ国6,538人(内、日本からは239人)より回答が得られました。

アンケート結果については、世界全体、日本、および各地域(アジア・大洋州、北米・西欧、中南米、東欧・中央アジア、中東、アフリカの6地域)の回答を比較したほか、設問によっては、子どもと若者、国別の比較など、様々な角度から分析を行ったところ、下記のような傾向が浮かび上がりました。(調査結果の詳細はこちら

  • 平和意識の広さ
    若者たちが「平和」について考える際、何を重視するか、その意識の広さを探ったところ、半数近くが「自然を含む地球の平和」と回答。また、年齢が高いほど、「自分の心の平和」も大切にする傾向がうかがえた。

  • 世界平和に向けた推移(過去~現在~未来)の捉え方
    昔に比べて世界は平和になったか否か聞いたところ、地域によって受け止め方が違い、アジア・大洋州、中東、アフリカでは、否定的な回答の方が上回った。
    一方で、いまの世界の平和の度合については、地域に係わらず約6割の回答者が40~60点と評価しており、世界平和への道のりは半ばとの見方を示した。
    更に、未来への展望を聞いたところ、約半数は生きている間の完全な世界平和実現は難しいと答えた一方で、4分の1の若者は平和になると回答。特に現状については悲観的な見方が多かった中東やアフリカの若者が、将来に関しては他の地域と比較して楽観的な回答が多かった点は注目に値する。
    尚、日本の若者は、6割が昔より平和になったと回答しつつも、将来、世界平和が達成できると考える者は1割以下で世界と比較しても少なかった。

  • グローバルな課題に関する意識
    世界の若者の多くが「科学技術の進歩による生活の質の向上」「教育の質の向上」「医療や福祉の促進」を実感している一方、解決しなければならない重要課題として「人権の抑圧や差別」「戦争や紛争」「貧困や飢餓」をなくすことを挙げた。
    また、日本の若者は、世界の改善点、課題ともに戦争や紛争の解決を最も重視しており、「平和=戦争・紛争のない状態」という概念が、根づいていると考えられる。

  • 自国に関する意識
    自分の国は平和な方だと「思う」「思わない」の割合は、世界全体では、ほぼ同じ。国別では、「思う」と答えたトップはブータン、「思わない」トップはアフガニスタン。日本は約9割が「思う」と回答した。
    また、「思わない」が多かった国々の若者は、「人権と自由」「政情の安定」「戦争と紛争の解決」を自国の重要課題に挙げた。

  • 平和のための行動・貢献
    若者たちの平和意識が、どのような行動に現われているかを探ったところ、8割の若者が日常的に平和について周りの人と話すことや、平和な人間関係を重視し、「他人への思いやり」や「話し合いでの問題解決」など実践していることがわかった。
    また、平和に貢献するために特に必要だと感じているものは、「教育や学びの場」「自分の意見を発表するチャンス」「同世代とのつながり」であるという回答を得た。

本調査の対象である国際ユース作文コンテストの参加者は、もとより平和に関心のある層であると考えられるため、アンケート結果には偏りがあるかもしれませんが、世界各国の若者たちが、自国や世界が直面する様々な課題を受け止め、それぞれが平和について考え、周りの人と話し、行動しようという意識を少なからず持っていることが明らかになりました。未来への希望を見出しにくい現代社会の中にあって、若者たちが平和でより良い未来を希求し、貢献しようとしていることは、私たちに大いなる希望を与えてくれます。

当財団は、1999年の設立以来、私たち一人一人は地球進化の担い手として共通の使命と責任を果たしてゆかねばならない、という「生命憲章」の理念のもと、子どもや若者を鼓舞し続け、彼らが平和創造の担い手としての役割を果たしてゆくことを支援する目的で、国際ユース作文コンテストのほか、持続可能な開発のための教育(ESD)地球っ子広場駐日大使館との連携教育プログラム社会起業家育成プログラムなど、様々な青少年教育事業を開発し、国内外で展開して参りました。

本アンケート調査の結果は、当財団が今後実施する青少年教育事業の参考になると同時に、各国の政策決定者をはじめ、教育関係者、青少年支援団体など、様々な方々に、有益なリソースとしてご活用いただけると考えています。

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