
五井平和財団では、平和な未来の構築のために国内外で活動する人々がつながり、連携を深める場として、「Peace Convergence」を開催しています。
3月7日(金)、「地球は人類にとって一つの家」を理念に掲げ、世界を巡りながら人々の連携を促している「Home for Humanity」ムーブメントの共同創設者、ラマ・マニ博士とアレクサンダー・シーファー教授夫妻を招き、社会をより良くしようと、教育・医療・食・デザイン・建築など、多様な分野で活動している29人との交流を企画しました。
第3回となる今回は、Home for Humanityの理念と重なる「生命憲章」の四原則を主題としたスピーチを起点に、参加者たちの様々な視点や経験、英知が交わる機会となりました。
冒頭、西園寺裕夫理事長は、遺伝子研究の第一人者、故村上和雄博士の言葉を引用し、生命の奇跡や尊さを参加者に語りかけました。
シーファー夫妻は、7世代先を見据え、2030年までに世界195カ国を巡り、それぞれの地の自然や文化、シニア、若者、女性たちとの交流を通じて得た、平和を築くための英知を世界に発信する旅「One Home Journey」を昨年9月21日の国際平和デーにスタートし、13カ国目に日本を訪れました。これまで巡ってきたアフリカ、アジア、オセアニアの中から、アフリカの「あなたがいるから私がいる」というウブントゥの精神、「世界は一つの家族である」というインドの哲学を参加者と共有し、本会合への期待を語りました。

ラマ・マニ
Home for Humanityムーブメント共同創設者。平和構築と社会変⾰に携わるトランスフォーマティブ・パフォーマンス・アーティスト。芸術と創造性を通じた包括的な平和・和解を促進。⼤学教授として、⾃⼰変容を促すワークショップを開催。

アレクサンダー・シーファー
Home for Humanityムーブメント共同創設者。統合的発展論・哲学を専門とする学術活動家、教育者。大学教職や著作を通じて、社会の持続的変革と革新を呼びかけている。
「生命憲章」の四原則をテーマにしたプレゼンテーション
大自然への感謝と共生
「生命憲章」の四原則の中で、最初に取り上げたテーマは「大自然への感謝と共生」。映像ディレクターの河村和紀氏が、暦師の杉山開知氏が考案した「地球暦」という、太陽を中心にした地球を含む惑星の動きを1兆分の1に縮小した円形のカレンダーを紹介。地球歴を見ると、宇宙空間のどこに地球が位置しているかが365日わかるようになっており、河村氏は、「宇宙から見れば私たちは皆ここ、地球にいる」と語り、宇宙に視座を置くことで、全ての人が同じ星に共存している認識が持てることを示しました。
すべての違いの尊重
ニュージーランドで、クラスにただ一人の外国人として小学生時代を過ごした経験を持つ、和なびジャパン共同代表理事の木村素子氏は、「すべての違いの尊重」について、多文化共生の切り口から語ってくれました。
日本語が話せず、東日本大震災の際に不安な日々を経験したアメリカ人の母親と出会い、外国人向けに防災ワークショップを始めると、国籍を問わず「大切な人の命を守りたい」という共通の思いが輪を広げていったこと、また、日本の企業文化に馴染めない留学生たちに向けて、禅、茶道、華道などの体験を通じて、日本文化の本質にある礼節や優しさなどを伝える活動などが語られました。
木村氏の「多様性を負担ではなく、祝福として感じられるような社会になってほしい」という言葉に、共鳴の声が広がりました。
精神と物質の調和
「精神と物質の調和」については、量子力学の観点から共生論を研究されている武蔵野学院大学教授の砂子岳彦氏がスピーチ。
砂子氏は、精神を理解する上で、物質の定義を明確にした後、人間の会話は物質の肉体を通して行われる精神の交流であることや、紙(物質)に印刷した、紛争が続くガザで亡くなった詩人のメッセージ『If I must die(もし私が死ななければならないのなら)』を読み上げるなどして、精神と物質は分離されたものではないことを説明しました。
さらに、生命は、肉体だけではなく日常の些細な出来事にも宿り、相互に助け合って成り立っているという「ワンネス」の概念にも通じる詩『生命は』(作 吉野弘氏)を朗読し、「精神と物質の調和」への理解を深めました。
参加者からは、デザイナーや職人の精神が込められている家具や建築物なども精神そのものではないかという発言、地球の家族として迎えた里子の問題行動をコントロールしようとしていたのは、子どもを物質として見ていたのかもしれないという気づき、抱きしめた子どもにかけた愛の言葉に自分も癒され、一体感を感じた体験など、多岐に亘るコメントが共有されました。
生命の尊厳
最後のテーマ「生命の尊厳」で語ってくれたのは小澤綾子氏。20歳の時に進行性の難病、筋ジストロフィーと診断されるも、外資系企業に勤務し、シンガーソングライターとしても活動する2歳の男の子のママです。
寝たきりになる未来を告げられた時の絶望や、歌手になるきっかけをくれた同じ病いを持つ寝たきりの友人との出会い、我が子への思いなど、たくさんの心の内を話してくれました。
「私は子どもを抱くこともできないけれど、障がいがあっても同じ感情を持つ等しい人間であることが理解され、どんな違いがあっても差別のない、生きやすい世界になってほしいと願っています。そのために、私は話し、歌い、聞く人に命の尊さや、生きる希望や勇気を届けるために、心を燃やして自分らしく生きています」と、語ってくれました。
最後に、「人は何のために生まれ、何をして生きるのか」という深淵なメッセージが込められた、やなせたかし氏作詞の「アンパンマンのマーチ」を歌唱。生命の輝き、尊さを体現して生きる小澤氏の歌声に、参加者の心は勇気と感動で滿たされました。
世界の英知の共有
マニ博士とシーファー教授は感動した面持ちで小澤氏に、「あなたのお話と歌声は、私たちと一緒にこれから世界中を旅します」と伝え、シーファー教授は、詩を引用しながら「インナー・ホーム(内なる家)」について語りました。
また、アーティストでもあるマニ博士は、訪れた国で出会った人々の物語を芝居風に一人語りで紹介してくれました。コンゴ民主共和国で親を殺害された青年の再生と希望の物語や、エジプトの砂漠で愛の経済を実践し、農村地域の発展に貢献している起業家の話など、どれも引き込まれるパワフルな物語でした。
最後に、2030年の世界と自らの活動の未来像を全員が発表し、7時間におよぶ会合は終了しました。
参加者から、「根源は一つであり、視点の違いを知ることでそれが包括され、大きな存在として、それぞれに異なる視点を受け入れられるのだと感じられた、美しい場でした」などの感想が寄せられました。
ラマ・マニ博士とアレクサンダー・シーファー教授、生命憲章をテーマに語ったスピーカーたちの英知、そして参加者の気づきが溶け合い、それぞれの視野や価値観がさらに広がり、つながりが深まる貴重な一日となりました。