【開催報告】第4回ESD日本ユース・コンファレンス、および日中韓大学生交流プログラム

 

教育で未来を変えたいユースが大集合

「ESD日本ユース・コンファレンス」は、国内各地でESD(持続可能な開発のための教育)に取り組んでいる、多様な立場の若手リーダーたちが出会い、つながり学び合い、相互理解を深めながら教育の新たな潮流を創り出していく場です。日本/ユネスコパートナーシップ事業として、文部科学省、日本ユネスコ国内委員会、公益財団法人五井平和財団が開催しています。

2014年に第1回目が開催されて以来、毎年多くのコラボレーションやイノベーションを生み出してきた、ESD日本ユース・コンファレンスの仲間の輪をさらに広めるべく、2017年9月23・24日に千葉県・幕張において、「第4回ESD日本ユース・コンファレンス」が開催されました。また、今年はさらに世界に向けた発展を目指し、ESDユ-ス・ウィークとして、日本・中国・韓国の大学生がESDをテーマに交流する「日中韓大学生交流プログラム」が9月24日夜から26日まで連続して開催されました。

前半のユース・コンファレンスには、全国から教員、NPO、行政、企業、学生など様々な立場のESD実践者が54名集い、業種や分野を超えて、ESDという共通項のもとにつながり、互いにエンパワーし合いました。後半の日中韓大学生交流プログラムは、三カ国の大学生たち30名が相互理解と交流を深めながら、平和で持続可能な東アジアと世界の未来ビジョンを共に描きました。

第4回ESD日本ユース・コンファレンス(2017年9月23・24日)

第4回ESD日本ユース・コンファレンスのプログラムは、二日間に亘って、5部構成で行われ、1日目は、「旅の始まり、森を感じる、心をゆるませる」、「深くつながる、自分と仲間と」、「とことん語り合う、学びあう」というテーマでユースの視点からさまざまな意見が交換されるとともに、実践事例、課題、今後の展望などについての情報共有が行われました。2日目には、「未来へのシナリオづくり」、「前に進む、終わりは始まり」と題して、より具体的な行動目標についての議論が深まり、このコンファレンスにて築かれたネットワークを生かした新たなアクションの始まりを予感させました。

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オープニング

冒頭に、コンファレンスの目的が参加者54名全員で共有され、ESDユース・ウィーク開催の経緯と、ユースが主役としてコンファレンスをつくりあげる意義を当財団の宮崎雅美常務理事が述べた後、文部科学省国際統括官付国際統括官補佐の鈴木規子氏による、「持続可能な社会の実現に向けたユースへの期待」と題した基調講演が行われました。

国内外のESD推進に向けた動き、国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)達成に貢献するESDの意義などの解説、そして、「児童生徒と教員、世代間のつなぎ役として、ESD推進の中核を担ってほしい」、「自由な発想力、行動力、ネットワークで、ESDを通じてイノベーション(革新)を進めてほしい」など、国がESD推進のためにも、幅広い学びの対象者・参加者をつなぐ役割の担い手としてユースへ大きな期待を寄せていることなどが語られました。

今回のコンファレンスには、過去3回のコンファレンスの参加者から6名が企画段階から加わり、事務局と共に一からプログラムを練り上げたり、当日は参加者として、皆の緊張を和らげるためにコミュニケーションを図るなど、コンファレンスの場づくりに貢献してくれました。こうして出来上がった、ユースが主体となった対話型のプログラムが進んでいきました。

仲間と深くつながり、共に学び合う

第2部では、はじめに輪を作り、ユース各自の活動について学び合いました。そして、より深くつながるために、「絵による伝達競争」や『嘘つき自己紹介」が行われ、会場は和やかな雰囲気となりました。その後、参加者同士が互いの違いを認め、信頼し合えるようなチームづくり、そして、一人一人が、取り組んでいるESD活動を始めたきっかけや目指していることなど、具体的なストーリーを発表。聞く側は、「これからの時代に必要なリーダーシップ」、「これからの教育にとって大切なこと」、「プロジェクトや組織運営に関して大切なこと」という三つの観点で傾聴しました。

互いの活動を通して感じた、これからの時代に必要なリーダーシップについては、「異なる意見や多様性を認めながらも自律的思考を保つ」、「人を活かす、信頼する」、「当事者意識を持つ」、「モチベーションと行動」などが挙がり、これからの教育にとって大切なことは、「経験」、「なりたい自分の理想を持つ」、「語り合いながら学ぶ」、「モヤモヤ感が次のステップにつながる」、「大人の背中を見せる」など。また、プロジェクトや組織運営に関して大切なこととしては、「熱い思いを共有できる味方やパートナーを見つける」、「個々人の価値観を尊重する」、「働き方や関わり方への寛容さや自由さ」、「トップと現場の風通しの良さ」などが挙がりました。

第3部は、ESD実践者である参加者同士がワークショップや座談会を通して、お互いに学び合うピアラーニングの時間です。参加者の中から8名が主催者として名乗りを挙げ、他の参加者は、関心のあるテーマを選んで参加する分科会の形式で行われました。どの分科会も笑顔が多く、活発なやりとりが行われていました。そして各分科会から戻ったあとに行われた、全体でのふりかえりの時間(学びの共有)の後、参加できなかった分科会へ興味を抱き、質問し合う参加者の姿に力強さを感じました。

初日のプログラムはここで終了。一日を振り返り、彼らが得た印象を語ってもらうと、「インスピレーション、安心感、希望、使命、学び合い、対等、発掘、多様性、刺激、発見」などのキーワードが聞かれました。

ミニワークショップ・座談会
  • 「Gift + Issue = Change」 好きなことを活かしたアクションを考える!
  • 「あなたの取組、学校で生かしてみませんか」
  • 自分を駆り立てる問い (Driving Question) を見つけよう!~
  • 社会課題を他人事で終わらせないために必要なこと
  • あなたは家族・友達にSDGsをどう伝えますか?
  • 子どもの権利を保障するには~子どもアドボケイトになろう!
  • WHY ESD?? ~取り組む意義を身体を使って考えよう!~
  • SDGsをテーマとしたワーク案の検討

未来へのシナリオをつくり、前進する

二日目は、未来へ前進するためのプログラムが行われました。

第4部では、「持続可能な社会に向けたユースの使命とは」という大きなテーマを、リラックスした雰囲気の中で自由に楽しく対話する「ワールドカフェ」形式でスタートしました。ワールドカフェとは、テーマごとにいろいろな人と会話し、知識や英知、アイデアを集め、紡ぎ合わせる手法です。参加者は、「昨日の気づきや学び、驚きは何か」、「ユースの可能性とは何か」、「私はどこで、どんな変化を生み出したいのか」という問いを通して、参加者が感じている素直な気持ちを語りあい、自分たちの役割を探求していきました。では、参加者一人一人の活動やユース全体の活動が花開いた時、どんな未来がつくり出せるのでしょうか。

次のプログラムでは、2020年、2030年の「私」、「教育(界)」、「地域」、「日本」、「世界」、「生活・働き方」「社会システム(政治・経済)」は、どうなっているのか、想像力を自由に大きく働かせ、その未来像を書き出していきました。教育の世界では、「偏差値に変わる新基準が生まれ、生徒が主体の進路決定に」、世界では「テロ発生=ゼロ」、「マイノリティ(社会的少数者)教育が世界標準に」、日本については、「代替エネルギーが主力に」、「世代問わず、社会を変えることは当たり前でカッコイイという風潮に」等々、ポジティブなビジョンが集まりました。

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そして、参加者の思いが溢れはじめ、新たな取り組みが興りそうな予感にワクワク・ドキドキしながらも、しばらく各自の気持ちや思いを整理するために「サイレント」の時間が設けられました。未来の姿を念頭に、そこへ至る道筋、自分の役割、次に取るべき具体的アクションについて、それぞれがじっくり内省しました。

二日目のプログラムも終盤に入り、企画段階から協力してくれた過去のコンファレンスの参加者6名が、このユース・プラットフォームの構築や拡大に向けて、これまで培ってきた現在進行中のプロジェクトへの参加を呼びかけた後、最後のプログラム、アクション・プランニングへと移りました。これは、参加者の中で、今後、進めたいと思っているESDの活動や構想を応援するものです。14名から多様なアクションプランの提案があり、ほかの参加者は、関心のあるプランに対して意見やアイデアなどを出し合いました。それぞれのアクションプランには、この二日間での学びや気づきが生かされた、次のステップにつながる多様な知恵が集まりました。

14のアクションプランや探求テーマ
  1. 人(実践者)からESDを学ぶ機会の提供
  2.  戦争体験を受け継ぐにはどうしたら??
  3. まちを思いながら まちをつくる まちづくり活動
  4. 音楽やダンスを通じてESDを学ぶワークショップを考える
  5. 地球温暖化 × 〇〇(もやもや)から始まるプロジェクト
  6. 高校・大学を対象とした新しいキャリア発達プログラムを考えたい
  7. どうやったら町づくりで稼げますか? 土木とコラボさせてください!
  8. 地域と学生がつながり、一緒に子どもの学びを実現するには?
  9. どうしたら、生まれた環境を乗り越えて、才能を発揮できる人が育つか?
  10. 未来ESD会議6ヵ月プログラム
  11. ESDの授業におけるカリキュラムの形成と段階別教育
  12. 怒り(+気持ち)の表出 + 構造的暴力の理解を軸にしたシティズンシップ(市民)ワークショップ
  13. 高校生とつくるESDイベント企画
  14. この世界をどう見るか?

最後は、全員で輪になり、2日間を終えての気持ちや今後の抱負や感想を共有しました。「様々な立場の人と時間を忘れて話し、刺激をもらえた」、「それぞれの実践の場に戻っても応援し合える仲間と出会えた」、「時間が足りなくて話せなかった人も多いけど、継続したいと思えるコミュニティに出会えた」、「今回の気づきや学びを自分の活動に落とし込みたい」「とても刺激的な2日間で疲れたけれど、心地よい疲労感」、「それぞれの場所に戻っても、またユースのみんなに会えると思うと心強い」などが語られ、温かく、これからの行動のきっかけになりそうな雰囲気の中、閉会となりました。

 
 
 
 

日中韓大学生交流プログラム(2017年9月24日夜~26日)

ESDユース・ウィーク後半には、2016年1月の日中韓教育大臣会合で創設された「日中韓大学生交流プログラム」が、ESDをテーマに、9月24日夜から26日にかけて開催されました。

環境、平和、人権、健康福祉、地域活性化、エネルギー、防災等の現代社会の課題をテーマに、持続可能な社会づくりに取り組む三カ国のユース世代が、世界規模の課題を認識し、相互理解と信頼関係の醸成を図ることにより、アジアや世界の平和と繁栄に貢献し、プログラムを通して得た学びや成果を社会に還元するためのリーダーシップを育成することを目的としています。
※プログラムは全て英語で行われました。

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日中韓政府代表者らによる期待の言葉と、ESDに関する基調講演

9月24日に中国と韓国から到着した20名の大学生たちは、歓迎夕食会で、二日間のユース・コンファレンスを終えたばかりの日本人参加者たちから温かい歓迎を受け、2泊3日の日中韓大学生交流プログラムはスタートしました。

翌日、本格的なプログラムは、日中韓政府代表者の挨拶から始まり、まず、文部科学省の里見朋香国際課長から、歓迎の言葉と、隣国である日中韓三カ国の参加者の友情が深まることへの期待が語られました。次に登壇した韓国教育省国際教育課のファン・ソジョン課長補佐は、GCED(地球市民教育)とESDが、21世紀において、喫緊の様々な課題の解決に寄与するものであること、また、互いの友情が深まり、将来、リーダーとして三カ国の距離を縮めてくれることを希望すると述べました。

続いて、駐日中華人民共和国大使館の胡志平公使参事官より、三カ国のユース世代が各国や世界の未来の担い手として、英知と力を人類の持続可能な未来に向けて発揮してほしいと語りました。最後に、日中韓三国協力事務局の山本恭司事務局次長が、元国連事務総長のコフィ・アナン氏の「あなたが周りを導くのに遅すぎることはない」という言葉を引用しながら、諸課題に対する共通の責任を分かち合い、共に正義が守られ、より平和で寛容な世界を目指してほしいと、期待の言葉が贈られました。

参加者同士が互いの名前を覚え、打ち解けるためのアイスブレイクに続き、長年に亘り、国内外でESDの研究と普及に取り組んできた聖心女子大学文学部教育学科の永田佳之教授より、「ESDとSDGs:なぜ教育が持続可能な未来にとって大切なのか」と題する基調講演へ移りました。ESDにおける社会、環境、経済の三つの視点について解説し、持続可能な未来へ向けて、価値観やライフスタイルの社会的変容が必要であると指摘。そのための様々なアプローチの具体例を紹介しつつ、ユースたちに対する変革への期待を語りました。

ESD実践現場の視察

その後、参加者は各国2名ずつ、6名の混合グループに分かれ、都内五カ所のESD実践現場を視察しました。視察先のどのような点がESDか、また、自国の教育実践との違いや自分の活動に生かせる学びは何かなどのポイントを踏まえ、視察しました。視察から戻った後は、持続可能な発展について得た新たな学びや、ESDの重要性など、報告と感想がグループ間で共有されました。 その後は、各自の歩みや活動、その中で感じている課題などを時間が許す限り共有し、互いのつながりを深めていきました。

視察内容は、以下の通り。

日本科学未来館
科学教育・科学コミュニケーション
武蔵野東学園
混合教育の先進事例
アトム通貨
早稲田大学と周辺商店街による地域通貨
JICA(国際協力機構)地球ひろば
国際協力と国内における啓発
(一社)グローバル教育推進プロジェクト
カードゲームで学ぶSDGs(持続可能な開発目標)

東アジアと世界のビジョンを共創

翌日は、東アジアと世界の新しい持続可能な未来のビジョンを共創するプログラムから行われました。

まず、過去や常識にとらわれずに、自由な発想で、彼らの未来のビジョンのキーワードを挙げていきます。「平等」、「健康」、「テクノロジー」、「協力」、「つながり」、「ボーダーレス(国境が無い)」、「統合」等々、どれもポジティブな未来を連想させるものばかりです。

そのキーワードを念頭に、自分たちの国や地域、世界の未来について語り合い、ストーリーをつくって、寸劇や絵を使ったプレゼンなど、様々な形式で発表しました。将来、アジア連合が誕生し、今の日中韓三カ国間の壁は完全に取り払われ、一地方のようになる姿を描いたグループもあれば、AI(人工知能)や自動翻訳技術の発達により、言葉の壁が無くなるだけでなく、動物とも自由にコミュニケーションが取れるようになるなど、ユニークで斬新な発想に、会場は感嘆の声、笑い、感動に包まれました。

参加者による提案・主催型分科会

次のセッションでは、その未来のビジョンの実現に向けて、参加者自身が探求したいテーマや取り組みたいプロジェクトを提案し、自由にディスカッションする分科会の時間となりました。

「チャリティショップの開店と運営」、「相互理解を促進するためのオンライン・プラットフォームの構築」、「アジアにおける都市計画」、「アジア諸国における(儒教的な)年齢差別主義の克服」、「無知や無関心を乗り越え、グローバルな課題に人々をつなぐ方法」など、参加者の半数近い12名から提案がありました。どの分科会も参加者の多様な経験と視点によって活発に進んでいきました。

クロージング・セレモニー~友情を未来へつなぐ

本交流プログラムを締めくくるプログラムには、ワールド・ピース・フラッグ・セレモニーが行われました。地球儀を前に、一人一人が各国の人々の幸せと平和に思いを馳せると、会場は静かな感動に包まれていきました。

閉会後、濃密ないくつものディスカッションの緊張感から解放された彼らは充実の笑顔で、日本文化の体験として用意された「琴」の演奏を楽しみ、全てのプログラムが終了した後も、話が尽きることはありませんでした。三カ国の大学生がESDを通して友情を育むことができ、今回の体験が今後の彼らの活動、そして、将来的な連携につながることを予感させる機会となりました。

日中韓大学生交流プログラム参加者の声

 「この行事はグローバルな問題に対する私の気持ちを変えました。日中韓は強く結びつくことができるし、行動することもできます。世界には種々様々な問題がありますが、今、小さな行動がより良い世界をつくる一歩になると確信しています。未来のために最善を尽くしたいと思います」(日本)
 「私たちが共有した〝人類〟、そして〝より良い未来〟のゴールに対する見識が深まり、感動しています。私たちは一人じゃありません。変化は可能です。地球の痛みは癒せると信じています。将来、NGOや国際機関で働きたい気持ちが強くなりました」(中国)
 「日本や中国の友人をこれほど近しく感じたことはありません。彼らの誠意は私の心に触れ、障壁や偏見は自分たちの中に、その存在を許しているから存在するのだと気づかせてくれました。韓国でこの体験をシェアし、このコンファレンスのような三カ国間の相互理解を深められるプログラムにさらに参加して、アジアのために貢献していくつもりです」(韓国)

日中韓大学生交流プログラム参加者のメッセージビデオを見る