【開催報告】ESD日本ユース・プラットフォーム会合2019

2019年2月17日(日)、第5回ESD日本ユース・コンファレンス(昨年10月名古屋にて開催)のフォローアップとして、「ESD日本ユース・プラットフォーム会合」が、共同プロジェクトの実施報告などコンファレンス後の成果発表会も兼ねて、都内で開催されました。

東京会場に集った第5回コンファレンス参加者やコンファレンスのOBOG、ユースを応援してくれるメンターやESD関係者のほか、本会場での参加が難しい参加者をビデオ会議システムでつなぎ、約60名の参加者が業種、分野、世代を越えた対話を深めながら、実践コニュニティとしての「ESD日本ユース」の更なる発展と活性化に向けて、自由な意見交換を行いました。

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冒頭、文部科学省国際統括官付ユネスコ振興推進係長の田村謙治氏より、「これで終わりではなく、これからどういうビジョンが見えてくるかが大事。本日は成果発表と学び合いの場。ユース世代の皆さんも遠慮せず、ぜひ自分の意見や聞きたいことをぶつけ合って、多くのものを得て、今日一日を有効に使っていただきたい。また、メンターやゲストの皆様にとっても気づきの多い会にしていければと願っています」と挨拶がありました。

その後、お互いがコンファレンス後に取り組んできた「マイプロジェクト」を小グループに分かれて共有したほか、他のメンバーたちと連携・協力しながら取り組んできた「共同プロジェクト」を全体発表し、メンターを含む他の参加者からのフィードバックをもらう公開メンタリングを行いました。

共同プロジェクト発表

1. E・S・D(いつまでも しゃべろう どうするこれからの未来!?)
コンファレンスの参加メンバーが、実践コミュニティとして、気軽に楽しくつながり続けられるよう、それぞれの地域をつなげる場(オンライン・オフライン)を提供すると共に、メンターによる講演会・勉強会や情報交換会などを定期的に企画開催している。
2. ナレッジシェアプロジェクト
「教育」をキーワードに、企業や学校、NPO、行政がつながって、子どもの主体的な学びをつくることを目的に、高校生と多様な大人がビデオ会議を通して対話する未来型ワークショップをスタート。イベントの機会が少ない地方にとって機会不平等の是正にも寄与することを目指している。
3. SDGs for Children
小中学生が能動的にSDGsについて学べる敷居の低いウェブサイトを開設し、全国の各地域の学校の先生に広めることを目指している。今後は子ども向けのSDGs普及啓発動画やコンテンツを作成し、ウェブサイトの充実を図る予定。
4. 稼ぐ地方をプロデュースする
6次産業化に取り組む農家の支援や、地域の特産品の商品開発の支援を通して、自分が稼ぎ、地域の稼ぐ力を育む。宮崎県、愛知県、岐阜県、三重県などで、地域課題の解決や地方の活性化に向けて活動を展開中。
5. 岡山市SDGsフォーラム2019(SDGs x ユース・ネットワーキング・ミーティング)
岡山市役所や岡山のユースらが協働して、様々な団体で活躍する若者たちのためのプラットフォーム(質の高い若者が気軽に集まって街づくりに取り組めるSNS や場)を作り、このプラットフォームを活用して環境学習を推進する。

岡山市よりビデオ中継で発表。

午後の初めは、毎回のコンファレンスでも好評の参加者同士が学び合えるピアラーニングの時間を設け、4組7人の有志がワークショップを提供しました。

ピアラーニング・ワークショップ

1.【体験版】最高に楽しい「わがまま」な生き方~かっこいいって?~(第5回コンファレンス共同プロジェクト)
子どもたち一人ひとりが、自分で考え、自分の望む進路や仕事を選択し、それを実行する力「未来自己決定力」を養うためのワークショップを企画し、プロジェクトメンバーがゲスト講師として学校で提供している。プラットフォーム会合の直前に小学校で6年生を対象に行った授業の縮小版。
2. わくわくピアラーニング(第5回コンファレンス共同プロジェクト)
本音でアツく語る、わくわくタイムを生み出そう! 自分を見つめ直し、相手を発掘する1時間。向き合うって難しい…。でもだから楽しい! 持続可能な社会の担い手は、多様性を見出してわくわくできる人たちかも知れない。
3. シティズンシップを考える!-「良い」市民とは何か?-
前半では、「良い市民」についての参加者一人ひとりの考えやその考えの前提となっている経験について話し合いを行い、日本社会における「良い市民」をめぐる傾向や前提、その上で、ESDとして取り組む上での留意点について話し合いを行う。後半では、社会問題の解決に関する6つのアプローチからどれが最も効果的かという問いについての話し合いから、社会問題の解決に関しての一人ひとりの考えの前提を探る。
4. スマホ顕微鏡でのぞく、ミクロの世界(“科学×〇〇”の可能性を考える)
「スマホ顕微鏡」は、スマートフォンやタブレットPCに取り付ける新しいタイプの顕微鏡。肉眼では見ることのできないミクロの世界を体験し、本ツールの活用方法や“科学×〇〇”といった分野横断の可能性などについて考える。

その後、4人ずつのグループに分かれ、「より良い未来をつくるためにあなたが力を入れている活動は何ですか?」という問いに対して、自らがESDに関わることになったきっかけや、今取り組んでいることなどを一人ずつ他のメンバーに語る「ストーリーテリング」を行いました。お互いの活動への理解やつながりが深まる時間となりました。

午後の終盤は、有志が座談会を主催し、それぞれ関心のあるテーマやプロジェクトの企画等について語り合う、次の一歩を生み出すための「この指とまれ分科会」が、次の9つのテーマで行われました。

  • 仲間づくりの方法
  • 本当のキャリア教育って何?
  • SDGs for Childrenを通して子どもの未来について考えませんか?
  • 集まれ!! 学校現場に“行きたい人”“来てほしい人”。学校とのコラボ実践へのヒント
  • 日本の平和教育はなぜ第二次世界大戦で受けた被害中心なのか
  • ESDのキャリア(仕事)。どうやってESDを仕事にして、稼いでいくのか?
  • 実践に向けた一歩目の踏み出し方
  • ESDユースでつながった仲間が集まれる場づくり
  • 高校生の気候変動ストライキは日本では起こらないのか? をふか~く掘り下げる

最後は、一日、同じ志を持つ仲間たちと濃密なディスカッションの時間を過ごした感想や今後の活動に向けた抱負等が共有され、閉会となりました。世代、分野を超えて交流するだけではなく、今後につながる新たな出会いや学び、次の一歩につながるヒントや具体的なアイディアなどを得られるポジティブなエネルギーと熱気に包まれた会合となりました。

以下、最後のチェックアウトの時間に、参加者が述べた感想からの抜粋です。

  • 「ESDをすることが特別ではなく、当たり前のこととしてやっていけたらと思う。」
  • 「今日一日で、背中を押されたことが何回もあった。前向きな素敵な場所。」
  • 「高校生や中学生などの、若い世代も巻き込んでいけたらと思う。」
  • 「義務感でやらなければと思っていたが、頑張り過ぎない自分をありのままで受け入れることが出来るようになった。」
  • 「いろいろな意見に触れてモヤモヤした今の気持ちを整理したら、またみんなに会いたい。」
  • 「メンターの方々からの意見をもらい、今後の活動もクリアになった。」
  • 「本日の座談会で、毎月やっていきたい活動が具体的に4つも出てきた。」
  • 「子どもたち主体で、SDGsで地域を平和にする活動を今後もやっていきたい。」
  • 「微力であっても、集まれば何かできると感じられる場だった。」

第5回コンファレンスに参加したユースは、昨年10月のコンファレンスからプラットフォーム会合までの約4カ月間を振り返り、それぞれ自分の活動や自分自身の変化を感じているようです。

以下、参加者たち自身が感じた自らの変化です。

コンファレンスに参加してマイプロジェクトを進め始めてから、私自身の人生設計そして教育について考え直す機会がとても増え、教育の様々な可能性を実感できた。(大学生)
これまでは環境分野をフィールドに活動することが多かった。しかし、コンファレンス参加によって環境以外の分野にも関わりができ、それらの分野に対しても興味を持つようになった。(団体職員)
NPO 関係者や行政職員、また社会人教育の専門家と意見を交わすことで、教員という狭い視点に留まらずに活動することができた。(小学校教員)
最も大きな心境の変化は、『日本中で今日も仲間が頑張っている』と思えるようになったこと。(中学校教員)
コンファレンスではESD やSDGs といった各テーマに対して話し合う時間がたくさんあり、批判的・客観的に考えることの大切さに気付くことができた。また、オンラインでもオフラインでも気軽に集まって話すことができるESD ユースの仲間が増えたことで、ESD に感じるわくわくした気持ちが一層強まった。(図書館職員)

同じ年代や自分よりも若い方が地域から世界まで幅広く様々な人々や環境のために何かアクションを起こしているということを知り、自分自身の世界観が大きく変わった。(中学校・高校教員)

仲間が出来た、という実感を得た。まったく同じ価値観や趣味嗜好を持っていなくても、同じ方向を向いている仲間の存在がいるということで特に孤独に感じる活動にも支えになると思う。(会社員)
共有できる思いを持った仲間ができたことは、とても心強く、これからも進んでいく大きなモチベーションになった。(NPO法人スタッフ)

ユースたちを応援してくださったメンターからは、「生まれてきた様々なプロジェクトが、それぞれ発展していくために、ここに集まっている人的資源を活かして即実践できる『目の前の壁を突破する勉強会』ができるといいのではないか」等の貴重な意見が寄せられました。

今後は、各プロジェクトの前進とともに、ユースが自主開催する勉強会や交流会を通して、ESDに関心のある若者のネットワークの更なる広がりが期待されます。