2023年9月16日(土)、国連が定めた国際平和デー(9月21日)に合わせて、平和創造の担い手となる各国の若者リーダーのコミュニティづくり推進のため、五井平和財団ユース・イベント「平和のつくり方を考える」をオンライン開催しました。(協力:NPO法人Peace Culture Village)
歴代の国際ユース作文コンテスト受賞者や近年の応募者、その友人知人ら、多様な価値観や文化背景を持つ10代から30代の若者595人が世界68カ国より参加。広島在住の被爆者で、80カ国以上で被爆証言活動を行ってきた七宝作家の田中稔子さんの被爆体験や平和への思いに触れ、インスピレーションを受けた参加者たちは、平和の文化をつくるために自分に何ができるかを共に考えました。
インタビュー「暗闇の中に光を見出す」
メインゲストには、本年5月、主に国際ユース作文コンテストの歴代受賞者たちを対象に開催した「ピース・ダイアログ・ヒロシマ2023」にビデオ出演してくださった際に、反響が大きく、もっと直接話を聞きたいという声が多数寄せられた田中稔子さんをお招きしました。
川村真妃常務理事のインタビューや参加者との質疑応答を通して、小学1年生当時に被爆し、大やけどを負い、絶望の淵にあった時に見た美しい青空から、生きている実感、勇気や希望を見出した原体験、海外での被爆証言のエピソード、平和に向けた若者たちへの期待の言葉などを語ってくれました。
国益だけでなく「地球益」を考える人になってください
私は、原爆によって同級生やあまりにも多くの人が亡くなったことがショックでトラウマとなり、被爆体験を誰にも話したことはありませんでした。しかし、訪問先のベネズエラで、ある市長から『あなたには被爆体験を世界に話す責任がある』と言われたのをきっかけに、こんなことがもう二度と起こってはいけない、亡くなった同級生たちのご供養になれば、との思いから70歳を過ぎて証言活動を始めました。
原爆を使えば世界は滅亡します。最近は、ロシアのウクライナ侵攻の影響か、核兵器の恐ろしさが、人々にとって自分事になりつつある気がします。
皆さんのお顔を見ていると、どの国の人も〝普通の人〟で、普通に話が理解できる人たちです。ロシアの人たちも普通の良い人たちです。でも、その時のリーダーが他国よりも優位に立とうとか、覇権を求めたりして戦争を始めてしまいます。そのリーダーをつくったのは私たちの社会です。だから、戦争へ導くようなリーダーを生み出さない社会を私たちはつくらなくてはなりません。
平和な世界をつくるには、お互いに友人となって相手をよく知ることが、とても大事です。日々の生活での家族やご近所との付き合いも、世界との付き合いも原点は同じ。その原点を考えていく必要があります。そして、何より「今、生きている」ということがとても大事です。生きていれば何でもできます。他人と比べて、自分をダメな人間などと思うことはありません。
地球全体の観点から物事を考えなければいけない時が来たことを、若い人たちは感じ始めていると思います。これまでは、各国が国益を合言葉に懸命に努力してきましたが、そこには自分の国さえ良ければ、という思惑が見え隠れしています。核兵器使用の危機や気候変動の問題など、このままでは自国どころか、地球の存続が危ぶまれる状況です。
皆さんが、これから地球益という広い視野を持ち、自分の得意なことで、平和の文化のために活動してくだされば嬉しいです。
若者たちが得た新たな視点や気づき
田中さんの話を聞いた参加者たちは、少人数のグループに分かれ、話から得た新たな視点や気づき、自らが考える平和のつくり方などを語り合いました。
「互いの敵意を減らし戦争を防ぐためには、たとえ相手の意見に同意できなくても尊重することが大切」「平和のつくり方の共通点として、偽りのない自分自身の考えを周りの人たちに伝え、ポジティブな波及効果を生み出すことが大切」「世界平和の達成という大きなビジョンは、小さく、シンプルで、実行可能なステップから始まる」などの意見が共有されました。ウクライナからの参加者イリーナさんは「田中さんの『放っておいたら戦争は直ぐに起こるが、平和はつくり続けていないとすぐに失う』という言葉が心に残っている。平和への小さな一歩を踏み出そう」と訴えました。
最後に川村真妃常務理事から「一人一人がとても尊い存在。皆さんの声や行動を世界に広め、日常生活の中で平和への道を切り拓いてください」と、期待の言葉で締めくくられました。
「自分事」から始める平和の創造
イベント終了後に実施したアンケートには「平和な世界をつくるのは集団の努力。理解、共感、優しさなど、平和な世界を築くためのインスピレーションやポジティブな考え方を広めていきたい」(ルーマニア)、「平和を促進するために、生活の中で具体的な行動を起こしていきたい」(フィリピン)、「世界中の人たちと仲良くなる、国益でなく地球益で考えていくことを精一杯やっていく中で、平和をつくる方法は必ず見つかる」(日本)など、平和の創造に向けて、前向きな声が多く寄せられました。
今回、ロシアとウクライナなどの戦争・紛争中の国、貧困や飢餓、疫病などに苦しむ発展途上国からも多数の若者が参加しました。国や文化、政情、主義主張などの違いを超えて平和創造の担い手として集い、共に学び合った参加者たちと、これからも平和のためにできることを考えてまいります。
若者たちの参加国(68カ国)
アゼルバイジャン、アフガニスタン、アルゼンチン、アンゴラ、イラク、イラン、インド、インドネシア、ウガンダ、ウクライナ、ウズベキスタン、英国、エクアドル、エスワティニ、ガーナ、カザフスタン、カメルーン、韓国、カンボジア、北マケドニア、キプロス、ギリシャ、キルギス、グアテマラ、ケニア、コロンビア、コンゴ民主共和国、ザンビア、シエラレオネ、ジョージア、シリア、シンガポール、スリランカ、タンザニア、ドイツ、トリニダード・トバゴ、トルクメニスタン、トルコ、トンガ、ナイジェリア、ニカラグア、日本、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ブラジル、ブルネイ、ブルンジ、米国、ベトナム、ベラルーシ、ペルー、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ボツワナ、ボリビア、マラウイ、マレーシア、南アフリカ、南スーダン、ミャンマー、メキシコ、モンゴル、リベリア、ルーマニア、ルワンダ、レバノン、ロシア
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