【開催報告】地域の持続可能な未来をつくる学びと交流の場「ローカルSDGs ユース・ダイアログ」 @長野・北海道

ローカルSDGs

概要

昨年、環境省「令和2年度ローカルSDGs ユースセミナー業務」として、岡山県と滋賀県で実施した「ローカルSDGsユース・ダイアログ」を、今回は五井平和財団が主催し、北海道札幌市と長野県長野市の2か所で、オンラインを併用した3回連続セミナーを、令和4年2月~4月に開催しました。

本プログラムは、持続可能な開発目標(SDGs)に関心を持ち、あるいは既に各地で活動している18歳から30歳程度の若者を対象に、SDGsの達成や脱炭素社会、循環経済、分散型社会の実現に向けて、地域の特性と強みを活かしてサステナブルな社会づくりに貢献できるリーダーの育成を目的にしています。

1日目はオンライン、2日目は長野県長野市と北海道札幌市で対面開催、3日目はオンラインという全3回プログラムで行われました。ファシリテーターもユース世代が担い、プログラムを進行するなど、共に学び合うスタイルで実施しました。

ローカルSDGs(地域循環共生圏)とは、各地域が足もとにある地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し支え合うことにより、環境・経済・社会が統合的に循環し、地域の活力が最大限に発揮されることを目指す考え方であり、地域でのSDGsの実践を目指すものです。環境省ローカルSDGsサイト

プログラムの目的
  1. SDGsや地域の実践例を「学ぶ」
  2. 同じ志を持つ仲間と地域でつながり、地域を越えて「つながる」
  3. 地域を含む未来について、共に考え、ビジョンを「描く」
  4. 自分の可能性に気づき、取り組みたい種を「見つける」
主催 公益財団法人 五井平和財団
共催 札幌市(北海道会場)
後援 日本ユネスコ国内委員会、公益財団法人 ユネスコ・アジア文化センター、公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟、ESD活動支援センター、長野県、長野市、小布施町、信州大学、長野県立大学、環境省中部環境パートナーシップオフィス(EPO中部)
協力 地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)、環境省北海道環境パートナーシップオフィス(EPO北海道)、NPO法人 場とつながりラボhome’s vi、こども国連環境会議推進協会、NPO法人ezorock

DAY1(オンライン):全国の仲間と出会い、SDGsを学ぶ

初日、2月20日(日)は、オンライン会議システムZoomを使い、北海道・長野合同で行いました。
冒頭、全員でプログラムの目的や進め方、3日間のローカルSDGsの「旅」を有意義に過ごすためのグランドルールなどを確認して足場を揃え、アイスブレイクや自己紹介を行い、互いに心をゆるませていきました。
そして、3名の講師によるSDGsを学ぶ講演、ワークショップへと移りました。

一人目の講師、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)の江口健介氏は、「地域循環共生圏(ローカルSDGs)の実現に向けて」というテーマで、地域の活力が最大限に発揮されるための大切なポイントや各地域で生まれている優良事例、また私たちは、SDGsが国連で採択された2015年以降、激動の世界を生きており、人類と地球の未来は若い世代の手の中にあると語りました。

続いて、米国バークレー在住のアクティビスト、齊藤由香氏が「海外のサスティナビリティアクション」と題し、米国の事例を中心に、「Think Locally, Act Globally(地域レベルで考え、地球規模で行動する)という発想に基づく地域の活用やコミュニティの力、コモンズ(共有資源)と呼ばれる概念を紹介しつつ、様々な社会的課題を共に問い合うことの大切さなどについて語りました。

最後に、こども国連環境会議推進協会事務局長、井澤友郭氏が、「SDGsとはなにか? ~ 私たちの選択が未来を変える」というテーマで講演。SDGsが「誰一人取り残さない」世界の実現という目標であり、社会課題を分析する17の視点であるということを踏まえ、日本と世界の現状を正しく知り、今まで当たり前とされてきたことを鵜呑みにせず、より高い解像度で問い続けること、また、行動だけでなく、価値観を変えていくことの大切さについて、ワークショップ形式で学びました。

参加者たちは「地域の資源を生かすことが重要」「本当の豊かさや便利さとは何か問い続け、価値変容をしていくことが必要」「SDGsは複数の事柄が複雑に絡み合っている。一つを解決すれば済むものではないことがわかった」など、感想を述べました。

ローカルSDGs 井澤友郭 氏

井澤 友郭 氏

ローカルSDGs

今日の気づきベスト3

DAY2(長野会場/北海道会場):地域の仲間とつながり、事例を学び、取り組みたい「種」を見つける

2日目のプログラムは、それぞれ長野市、札幌市にて、対面形式で行いました。(長野会場 3月5日(土)、北海道会場 3月12日(土))

初日のプログラムを振り返り、アイスブレイクの「絵による伝達競争」でお互いの緊張をほぐした後、「今大事にしているテーマや活動に出会った経緯や夢中になっていること」「参加の動機、SDGsに関心がある理由」「チャレンジしたいこと、悩み、課題」という3つのテーマで、小グループになって、じっくりと語り合いながら、一人一人の魅力を見える化し、仲間たちとつながっていきました。
その後、未来づくりのヒントとなるよう、10年後何が起こっているか多様なテーマから展望し、自由にビジョンを描いていきました。

ワクワクするような10年後の未来像 = シェアドビジョン(抜粋)
  • 私: 「起業家」「自由な働き方」「世界中を飛び回る」「パスポート無しでの海外旅行」他
  • テクノロジー・ビジネス: 「自然とデジタルのゆるやかな融合」「自動運転の乗り物」他
  • 教育: 「長所をのばす教育」「地方でも最先端の学びを」「ベジタリアン向け給食」他
  • 地域社会: 「産学官連携」「空き家スペースが8割実用化」「シェアリング経済」他
  • 社会問題・地球環境など: 「障害者への理解の深まり」「エネルギー自給率150%」「戦争がない平和な世界」他
ローカルSDGs長野会場
ローカルSDGs長野会場
ローカルSDGs北海道会場
ローカルSDGs 北海道会場

未来のビジョンを描いた後は、参加者がそれぞれにチャレンジしたいことや自分の取り組みたい「種」を見つけるヒントを得られるよう、「地域におけるSDGsの実践例を学ぶ」というテーマで、地域で持続可能な社会づくりに取り組んでいる有識者による講演がありました。

【長野会場】講師:大宮透氏(小布施町総務課長)
「まちづくりの先進地」として注目される人口約1万1千人の町の「ごみゼロ」「脱炭素」を目標に掲げる環境政策や、地域での取り組みの可能性や課題などについて、町の事業を紹介しつつ、「社会課題を一番近い現場で解決していく」と行政の世界に飛び込んだ自身の思いや国内外での様々な体験談も交えて語りました。

【北海道会場】講師:佐竹輝洋氏(札幌市環境局 環境政策担当係長)/草野竹史氏(NPO法人ezorock代表理事)
対談形式で、市の環境政策の推進役の佐竹氏と、多くの人を巻き込みながらゴミ問題などの社会課題解決に取り組んできた草野氏が、行政とNPOの連携を通じた持続可能な社会づくりや、若者たちの役割、環境教育のあり方などについて語り合い、参加者と対話しました。

2日間のプログラムを終え、参加者達は「自分の原点」「多様性との出合い」「世界・地域の未来」の3つのポイントから、静かに内省し、思いついたアイデアを書き出しながら、今後自分が取り組みたいことの「種」を見つけていきました。
その後、グループ内でお互いの「種」を共有し、どのように一歩を踏み出すかを話し合いました。

チェックアウトでは「『多様な存在が大切にされる社会をつくりたい』という講師の思いに共感した」「このメンバーと地域のために何かやってみたい」「すべてのアクティビテイが多様な意見を受け入れる温かさがあり、充実した時間を過ごせた」など、感想を述べました。

参加者たちが見つけた「種」(DAY3までに試してみたいアイデア)
  • 自分が得た情報やSDGsに関する問題点などを周りの人たちに伝え、意見を聞く。
  • 自治体が直面する地域課題についてより知識を深めたい。
  • SDGsの無関心層も巻き込める場づくり・イベントを企画する。
  • 個人でどんなエネルギーがつくれるか調べてつくってみる。
  • 自然環境の保全のためにできることを10個考えて、1つ実践する、他。

DAY3(オンライン):全国の仲間と再び出会い、歩み出す

3日目の4月3日(日)は、再び全員でオンライン上に集いました。3日間を通して得た学びや気づき、「自分の種」を胸に抱きながら、新たな一歩を踏み出しました。

メインプログラムとして、構成作家・京都芸術大学客員教授の谷崎テトラ氏が「持続可能な社会の実現に向けて」というテーマで講演。

谷崎氏から、人類は地球を宇宙から眺めるような「惑星意識」に目覚め、思考を大きく転換する必要があると、新たな視座が示され、参加者の「種」を育てる後押しとなりました。

参加者からは「現在の地球に起きている危機を様々な角度から知ることが出来た。自分の大事な種を育てつつ、持続可能な社会に向けて、出来ることから少しずつ取り組みたい」「ポジティブなアクションを呼びかけるアースデイの理念に感動した」などの感想が聞かれました。

参加者の声(抜粋)
  • まずは小布施を訪問し、様々な活動をしている方とつながり、一緒に何かをしたい。
  • アート×SDGsの観点から、札幌で若者を対象にしたイベントをやってみたい。
  • 自らの現在地を確認し、次に進むべき方向を見定める貴重な機会となった。
  • 価値変容とはどういうことかピンときたのが大きな収穫だった。プログラム全体を通して自分を振り返る、自分の現状を知るとても良い機会となった。
  • 共感も驚きも応援もたくさんあった3日間だった。出会いに感謝。
  • 多様なメンバーの価値観、視点、立場から、人間の多様性を教えてもらえた貴重な時間だった。
  • SDGsにあまり関心のなかい人を巻き込み、地球規模の視野で活動していきたい。

終了後の参加者アンケートでも、「SDGsについて学びと理解が深まったか」と「自分の意識や行動に変化はあったか」という問いに対して、多くの参加者から肯定的な回答が得られました。

ファシリテーター育成 & コミュニティの更なる発展に向けて

ファシリテーター育成について

ユース・ダイアログの実施にあたっては、NPO法人場とつながりラボhome’s vi代表理事で、東京工業大学リーダーシップ教育院特任准教授の嘉村賢州氏の監修の下、様々な立場でSDGsやESDに取り組む同世代の若者7 名(当財団が事務局を務めるESD日本ユースのメンバー)が、事前研修を行い、参加者兼ファシリテーターとして、プログラムを運営しました。

コミュニティの更なる発展に向けて

参加者からの「他の地域とも交流したい」という声を受け、4月28日(木)、北海道・長野に加え、令和2年度ユース・ダイアログ開催地の滋賀・岡山も含めた、参加者10名が、オンライン上で一堂に会し、「ローカルSDGs合同交流会」を実施しました。

各地域にて、それぞれの立場でローカルSDGsの発展に取り組む、同じ志を持ったユース同士が、和気あいあいとした雰囲気の中、お互いの活動情報や経験などを共有し、応援し合う貴重な機会となりました。

今後も、今回の参加者を当財団やESD日本ユースが主催する勉強会などに招待し、ユース同士のネットワーキングの機会を継続的に提供していく予定です。

ユース・ダイアログの講師陣(敬称略)

江口 健介

江口 健介(えぐち けんすけ)

地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)

神奈川県出身。大学在学中、国際青年環境NGO A SEED JAPANに所属し、組織内の人材育成や北海道洞爺湖G8サミット、愛知名古屋で開かれたCBD-COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)に向けた政策提言活動を行った。大学卒業後、ベンチャー企業勤務を経て、2013年より現職。地域循環共生圏(ローカルSDGs)の実現に向けて、日本全国の環境パートナーシップ形成に関わる。


齊藤 由香

齊藤 由香(さいとう ゆか)

アクティビスト・翻訳家・通訳・ワークショップファシリテーター

現在は日本およびアメリカで平和・環境・社会正義運動に積極的に関わるとともに、関連書籍および映像の日本語翻訳を行う。2011年より米国の仏教哲学者・社会活動家であるジョアンナ・メイシーに師事し、2014年以降彼女が生んだ「つながりを取り戻すワーク」のワークショップを日本で開催。社会や世界の痛みに対する気づきと行動をうながし、新しい世界観や価値観にもとづいたコミュニティ作りを目指している。米国カリフォルニア州バークレー在住。


井澤 友郭

井澤 友郭(いざわ ともひろ)

こども国連環境会議推進協会 事務局長

2003年から「持続可能性」や「危機管理」をテーマに、各地の学校や企業、自治体などにワークショップなどの教育コンテンツを提供。2016年から国連・持続可能な開発目標(SDGs)に関する理念浸透や新規事業開発、地域活性化を目的としたプログラムを多数開発しながら、ファシリテーション講座なども開催。


大宮 透

大宮 透(おおみや とおる)

小布施町 総務課長

東京大学大学院工学系研究科修了(都市工学修士)。2013年より長野県小布施町に拠点を移し、法政大学・小布施町地域創造研究所の主任研究員として長野県内外で地域づくりの仕事をはじめる。 地域内外の様々なアクターの協働を推進し、新しいプロジェクト構想のコーディネーター・ファシリテーターとして活動。小布施では、特に都会の若い世代をターゲットにした小布施若者会議やHLAB OBUSEなどの取り組みを仕掛け、人口1万1000人の町に多様な若者が集う環境づくりを推進。2020年4月より小布施町役場に入庁し、防災まちづくりや環境政策の推進、組織改革等に従事している。


草野 竹史

草野 竹史(くさの たけし)

特定非営利活動法人ezorock 代表理事

酪農学園大学環境システム学部経営環境学科卒。在学中、野外ロックフェスのごみ問題に取り組むNGOの活動に参加。翌年、NPO ezorockを設立。持続可能な社会づくりに向けて、若者を主体とした多数のプロジェクトを創出。これまでに延べ2万人を超える若者に対して北海道各地の取り組みに参加する機会を提供している。


佐竹 輝洋

佐竹 輝洋(さたけ あきひろ)

札幌市環境局 環境都市推進部 環境政策課 環境政策担当係長

2004年に札幌市入庁。2008年より環境計画課へ配属となり、環境教育や温暖化対策等の環境政策を担当。環境省地球温暖化対策課への出向経験などを経て、2015年よりSDGsに関わり、2020年に現職。2018年3月に策定した第2次札幌市環境基本計画へのSDGs導入や、2018年6月に札幌市を含む全国29都市が選定された「SDGs未来都市」などを担当するとともに、SDGsの普及や実践に向けた様々なセミナーや講演会等へ登壇している。


谷崎 テトラ

谷崎 テトラ(たにざき てとら)

作家・構成作家・京都芸術大学客員教授

環境・平和・アートをテーマにしたメディアの企画構成・プロデュースを行う。価値観の転換(パラダイムシフト)や、持続可能社会の実現(ワールドシフト)の 発信者&アーティストとして活動は多岐に渡る。アースデイ東京などの環境保護アクションの立ち上げや、国連 地球サミット(RIO+20)やSDGsなどへの社会提言・メディア発信を行う。メディアの企画構成は「素敵な宇宙船地球号」(テレビ朝日)、「アースラジオ」(INTER FM)「里山資本主義CAFE」(NHK World)環境省「森里川海」映像など多数。

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「ローカルSDGs ユース・ダイアログ2022」&「キャンパス・ミーティング2022」開催報告PDF

その他開催報告

「ローカルSDGs ユース・ダイアログ」@岡山・滋賀2021 開催報告
「ローカルSDGs キャンパス・ミーティング」@福島・沖縄・岡山2022 開催報告