2022年度「平和に関する世界の若者の意識調査」を実施 ~143ヵ国の若者が回答~

平和についての意識調査の結果

公益財団法人 五井平和財団では、世界規模で、20年以上にわたって毎年実施してきた国際ユース作文コンテストの参加者の多様性に着目し、世界の若者たちの平和についての現状認識や問題意識、平和に貢献するために取り組みたいことなどをアンケート形式で聞き取り、そのデータから今の若者たちの意識の傾向を探りました。

2021年度に引き続き、2022年度の作文コンテスト参加者(5~25歳)に本調査への任意の協力を呼びかけたところ、全参加者(152カ国、19,986人)中、143カ国4,272人(うち日本は270人)より回答が得られました。

各設問の結果分析にあたっては、世界全体、日本、および6地域(アジア・大洋州、北米・西欧、中南米、東欧・中央アジア、中東、アフリカ)のデータを分類・比較しました。2022年度の世界全体の結果や2021年度との比較からは、幾つかの設問について地域特有の目立った変化が見られました。(調査結果の詳細はこちら

  • 平和意識の広さ
    「平和」について考える際、何を重視するか、その意識の広さを探ったところ、2021年度と同様に、4割強の若者が「自然を含む地球の平和」と回答。また、年齢が上がるほど、「自分の心の平和」も大切にする傾向がうかがえた。

  • 世界平和に向けた推移(過去~現在~未来)の捉え方
    昔に比べて世界は平和になったか否か聞いたところ、地域によって受け止め方が違い、2021年度に約半数を占めた「楽観的」が減少し、「悲観的」をわずかに上回る結果となり、両者の差が縮まった。アジア・大洋州、中東、アフリカでは、否定的な回答の方が上回った。
    一方で、いまの世界の平和の度合については、2021年度と同様に、地域に係わらず約6割の回答者が40~60点と評価しており、世界平和への道のりは半ばとの見方を示した。
    さらに、未来への展望を聞いたところ、2021年度と同様に、約半数は生きている間の完全な世界平和実現は難しいと答えた一方で、4分の1の若者は平和になると回答。特に現状については悲観的な見方が多かった中東やアフリカの若者が、将来に関しては他の地域と比較して楽観的な回答が多かった点は注目に値する。
    なお、日本の若者は、半数以上が昔より平和になったと回答しつつも、将来、世界平和が達成できると考える者は約12%で世界全体と比較しても少なかった。

  • グローバルな課題に関する意識
    2021年度と同様に、世界の若者の多くが「科学技術の進歩による生活の質の向上」「教育の質の向上」「医療や福祉の促進」を実感している一方、解決しなければならない最重要課題として「戦争や紛争をなくすこと」を挙げた。
    また、日本の若者は、世界の状況で最も改善された点として「医療や福祉の促進」を挙げた一方で、課題として戦争や紛争の解決を最も重視していた。

  • 自国に関する意識
    世界全体では、自分の国は平和な方だと「思う」「思わない」の割合は、2021年度とほぼ同率。国別では、「思う」と答えたトップはオーストラリア、フィジー、ザンビアが同率、「思わない」トップはミャンマー。日本は、2021年度と同様に、9割近くが「思う」と回答した。
    また、「思わない」が多かった国々の若者は、「戦争と紛争の解決」「人権と自由の擁護」「政情の安定」を自国の最重要課題に挙げた。

  • 平和のための行動・貢献
    若者たちの平和意識が、どのような行動に現われているかを探ったところ、2021年度と同様に、8割強の若者が日常的に平和について周りの人と話すことや、平和な人間関係を重視し、「他人への思いやり」や「話し合いでの問題解決」など実践していることがわかった。
    また、平和に貢献するために特に必要だと感じているものについても2021年度と上位は変わらず、「教育や学びの場」「自分の意見を発表するチャンス」「同世代とのつながり」という回答を得た。

本調査の対象である国際ユース作文コンテストの参加者は、もとより平和に関心のある層であると考えられるため、今回の結果を世界の若者の総意と断定はできないものの、回答者の8割が初めて回答したにも関わらず、2021年度と大差ない結果となったことは、彼らが自国や世界が直面する様々な課題を受け止め、それぞれが平和について考え、周りの人と話し、行動しようという意識を少なからず持っていることの証しと考えられます。

2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻や、長引くコロナ禍、より厳しさを増す気候変動や自然災害などは、若者たちの平和意識にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。いくつかの回答結果から、世界全体、また特定の地域の若者たちの意識の変化を読み取ることができました。

激変する世界や社会情勢の中にあっても、若者たちが希望を失わず、前向きに、平和な未来の実現を目指していることは、人類にとって大きな勇気や力となっています。

当財団は、1999年の設立以来、私たち一人一人は地球進化の担い手として共通の使命と責任を果たしてゆかねばならない、という「生命憲章」の理念のもと、子どもや若者を鼓舞し続け、彼らが平和創造の担い手としての役割を果たしてゆくことを支援する目的で、国際ユース作文コンテストのほか、持続可能な開発のための教育(ESD)地球っ子広場駐日大使館との連携教育プログラム社会起業家育成プログラムなど、様々な青少年教育事業を開発し、国内外で展開して参りました。

本アンケート調査の結果は、当財団が今後実施する青少年教育事業の参考になると同時に、各国の政策決定者をはじめ、教育・研究機関の関係者、青少年支援団体など、様々な方々に、有益なリソースとしてご活用いただけると考えています。

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