2022年度「平和に関する世界の若者の意識調査」の結果

平和に関する世界の若者の意識調査

はじめに

公益財団法人 五井平和財団では、「平和の創造」を目的とした様々な活動の一環として、平和に資する青少年教育事業を展開してきました。

世界規模で、20年以上にわたって毎年実施してきた国際ユース作文コンテストの参加者の多様性に着目し、世界の若者たちの平和についての現状認識や問題意識、平和に貢献するために取り組みたいことなどをアンケート形式で聞き取り、そのデータから今の若者たちの意識の傾向を探りました。

本アンケート調査の結果は、当財団が今後実施する教育プログラムの参考になると同時に、各国の政策決定者をはじめ、教育関係者、青少年支援団体など、様々な方々に、有益なリソースとしてご活用いただけると考えています。

アンケート調査の実施方法

2021年度の調査に引き続き、2022年3月から8月にかけて、2022年度国際ユース作文コンテストに応募した世界152ヵ国19,986人の全参加者に対し、オンラインの「平和に関する世界の若者の意識調査アンケート」への任意の協力を呼びかけたところ、21.4%にあたる143ヵ国4,272人(内、日本からは270人)より回答が得られました。

回答者の概要

回答者の地域別の内訳は、日本を含むアジア・大洋州が27ヵ国2,008人(47.0%)、北米・西欧が15ヵ国108人(2.5%)、中南米が25ヵ国517人(12.1%)、東欧・中央アジアが24ヵ国432人(10.1%)、中東が12ヵ国156人(3.7%)、アフリカ40ヵ国が1,026人(24.0%)、その他の地域が25名(0.6%)となりました。(回答者の国の地域区分は表0-1の通り)

回答者の性別の内訳は、男性30.1%、女性68.5%、その他1.4%でした。(グラフ0-1の通り)
また、回答者の年齢分布は、16~20歳が全体の49.8%を占めました。(グラフ0-2の通り)

表0-1)地域区分
          地域           アンケート回答者の国
アジア・大洋州 インド、インドネシア、オーストラリア、韓国、カンボジア、北朝鮮、シンガポール、スリランカ、ソロモン諸島、タイ、中国、日本、ニュージーランド、ネパール、パキスタン、パプアニューギニア、バングラデシュ、東ティモール、フィジー、フィリピン、ブータン、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、モルディブ、モンゴル、ラオス
北米・西欧 アイルランド、イタリア、英国、オランダ、カナダ、スイス、スウェーデン、スペイン、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、フランス、米国、ポルトガル、マルタ
中南米 アルゼンチン、エクアドル、エルサルバドル、ガイアナ、キューバ、グアテマラ、コスタリカ、コロンビア、ジャマイカ、セントビンセントおよびグレナディーン諸島、チリ、ドミニカ共和国、トリニダード・トバゴ、ニカラグア、ハイチ、パナマ、パラグアイ、バルバドス、ブラジル、ベネズエラ、ベリーズ、ペルー、ボリビア、ホンジュラス、メキシコ
東欧・中央アジア アゼルバイジャン、アルバニア、アルメニア、ウクライナ、ウズベキスタン、カザフスタン、北マケドニア、ギリシャ、キルギスタン、クロアチア、スロバキア、セルビア、タジキスタン、チェコ、トルクメニスタン、ハンガリー、ブルガリア、ベラルーシ、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モルドバ、ラトビア、ルーマニア、ロシア
中東 アフガニスタン、イエメン、イスラエル、イラク、イラン、オマーン、キプロス、クウェート、シリア、トルコ、パレスチナ、レバノン
アフリカ アルジェリア、アンゴラ、ウガンダ、エジプト、エスワティニ、エチオピア、エリトリア、ガーナ、カメルーン、ガンビア、ケニア、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、ザンビア、シエラレオネ、ジンバブエ、スーダン、セネガル、ソマリア、タンザニア、チャド、チュニジア、トーゴ、ナイジェリア、ナミビア、ニジェール、ブルンジ、ベナン、ボツワナ、マダガスカル、マラウイ、南アフリカ、南スーダン、モーリシャス、モザンビーク、モロッコ、リビア、リベリア、ルワンダ、レソト

※地域の区分については、国連統計部(UNSD)が統計のために用いている区分に準拠しつつ、地政学的要因に加え、歴史的・文化的背景も考慮した。

Q0-1
グラフ0-1)回答者の性別

Q0-2
グラフ0-2)回答者の年令

アンケート結果と分析

各問の結果分析にあたっては、2021年度と2022年度の世界全体、日本のほか、地域ごとのデータを並べ、共通点や相違点等の傾向を比較しました。

問1:あなたは今回も含めて作文コンテストに何回参加したことがありますか。

2021年度とほぼ同様に、世界全体でも、日本に限った場合でも、アンケート回答者の8割が初参加、2割がリピーターであり、一定数は平和やより良い未来の創造に関心の高い層であることが分かった。(グラフ1-1-1、グラフ1-1-2、グラフ1-2-1、グラフ1-2-2の通り)

Q1-2021_世界
グラフ1-1-1)世界(2021年度)
Q1-2022_世界
グラフ1-1-2)世界(2022年度)
Q1-2021-日本
グラフ1-2-1)日本(2021年度)
Q1-2022-日本
グラフ1-2-2)日本(2022年度)

2021年度と同じく、若者たちにとって一番大切な平和は「自然を含む地球の平和」

問2:あなたにとって一番大切な平和とは何ですか。

子どもと若者の比較
2021年度と同様に、子ども(14歳以下)、若者(15~25歳)共に「自然を含む地球の平和」が自分にとって一番大切と考える者が最も多く、子ども49.2%(前年度比1.4%増)、若者39.8%(同0.5%減)であった。
また、2番目に多かった回答は、子ども、若者共に「世界人類の平和」であったが、子どもが22.7%(同1.9%増)であったのに対し、若者は25.3%(同1.8%増)であった。他方、子ども、若者共に3番目に多かった「自分の心の平和」では、若者24.2%が子ども16.2%を8.0%上回った。ここから、年齢が上がるほど、より内面を重視する傾向を読み取ることができる。(グラフ2-1ならびにグラフ2-2の通り)

Q2-子ども
グラフ2-1)子ども(14歳以下)2021年度と2022年度の比較

Q2-若者
グラフ2-2)若者(15~25歳)2021年度と2022年度の比較

世界と日本、地域別の2021年度と2022年度の比較
世界全体で、最も大切な平和は「自然を含む地球の平和」41.4%(2021年度比0.1%増)、2位が「世界人類の平和」24.9%(同1.8%増)、3位が「自分の心の平和」22.9%(同4.4%減)となった。2021年度から2位と3位が入れ替わり、平和意識が世界へ広がったように見受けられる。(グラフ2-3の通り)

日本は、2021年度3位の「自分の家族の平和」4.8%(同0.3%増)と4位の「自分の心の平和」4.4%(同1.4%増)の順位が入れ替わった。(グラフ2-4の通り)

地域別でみると「自分の心の平和」が、東欧・中央アジアでは16.2%(同9.1%減)、中東では10.3%(同5.4%減)と前年度から減少した。
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Q2-世界
グラフ2-3)世界(2021年度と2022年度の比較)

Q2-日本
グラフ2-4)日本(2021年度と2022年度の比較)

2021年度と同様に、昔に比べて世界は平和になったか否か、地域によって受け止めに違い。日本の若者の楽観的な回答が減り、悲観的な回答が増える

問3:昔に比べて、世界は平和になったと思いますか。

世界全体で、「楽観的」が「悲観的」をわずかに上回る結果に。2021年度は「楽観的」が「悲観的」を7.0%上回っていた。(グラフ3-1の通り)

日本では、2021年度は楽観的な回答(59.4%)が悲観的な回答(13.8%)の差が45.6%であったが、2022年度は楽観的な回答(51.5%)と悲観的な回答(20.0%)の差が31.5%に大きく縮まった。(グラフ3-2の通り)

地域別に見ると、北米・西欧、中南米、東欧・中央アジアで楽観的な回答が悲観的な回答を上回った。特に、中南米と東欧・中央アジアでは、楽観的な回答が半数以上(それぞれ51.8%、54.6%)を占めた。他方、アジア・大洋州、中東、アフリカでは悲観的回答が上回った(それぞれ43.7%、39.7%、50.8%)。
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Q3-世界
グラフ3-1)世界(2021年度と2022年度の比較)

Q3-日本
グラフ3-2)日本(2021年度と2022年度の比較)

いまの世界の平和の度合は40~60点と評価

問4:いまの世界は平和だと思いますか。平和の度合いに点数を付けるとすれば、何点だと思いますか。

回答者が付けた10点単位の点数のうち、0~30点を低(悲観的)、40~60点を中、70~100点を高(楽観的)と大別した。

世界全体で、57.9%(2021年度比1.3%減)が40~60点の平均的な評価。悲観的評価と楽観的評価は、それぞれ25.2%(同0.5%増)、16.9%(同0.8%増)という結果になった。(グラフ4-1-1ならびにグラフ4-1-2の通り)

日本でも、57.1%(同0.7%減)が平均的な評価を行った一方で、悲観的評価と楽観的評価が、それぞれ24.5%(同5.2%増)、18.5%(同4.5%減)となり、後述の東欧・中央アジアと同様に、平和の度合を悲観視する傾向が強まった。(グラフ4-2-1ならびにグラフ4-2-2の通り)

地域別に見ると、東欧・中央アジアでは悲観的な評価が19.6%(2021年度比5.0%増)となった一方、楽観的な評価が24.1%(同2.9%減)と地域別では最も高かった。

北米・西欧、中南米、中東では、悲観的な評価がそれぞれ31.5%(2021年度比3.8%)、31.0%(同4.6%増)、28.8%(同1.7%減)であった。
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Q4-2021_世界
グラフ4-1-1)世界(2021年度)
Q4-2022_世界
グラフ4-1-2)世界(2022年度)
Q4-2021_日本
グラフ4-2-1)日本(2021年度)
Q4-2022_日本
グラフ4-2-2)日本(2022年度)

2021年度と同様に、約半数は生きている間の完全な世界平和実現に否定的な一方で、1/4は平和になると信じている

問5:あなたはあなたが生きている間に、世界が完全に平和になると思いますか。

世界全体では、自分が生きている間に、世界が完全に平和になると「思う」と答えた者が25.7%(2021年度比2.0%増)であったのに対し、「思わない」と答えた者が49.7%(同2.4%減)であった。(グラフ5-1-1ならびにグラフ5-1-2の通り)

日本では「思う」が11.9%(同2.3%増)、「思わない」が68.1%(同4.7%減)と、世界に比べて悲観的な回答が目立った。(グラフ5-2-1ならびにグラフ5-2-2の通り)

その中にあって、地域別では、東欧・中央アジア、中東、アフリカでは、それぞれ32.9%(同7.3%増)、35.3%(1.4%減)、35.4%(3.3%減)の若者が、世界が完全に平和になると「思う」と回答。同地域の若者たちが、紛争や不安定な政情などの現実に晒されながらも、依然として平和への希望を失っていないことの現れであると考えられる。
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Q5-2021_世界
グラフ5-1-1)世界(2021年度)
Q5-2022_世界
グラフ5-1-2)世界(2022年度)
Q5-2021_日本
グラフ5-2-1)日本(2021年度)
Q5-2022_日本
グラフ5-2-2)日本(2022年度)

2021年度と同様に、「科学技術の進歩による生活の質の向上」「教育の質の向上」「医療や福祉の促進」を実感

問6:世界の状況で、良くなったと思う点は何ですか。(3つまで選択可)

世界の現状で、良くなったと思う点として、世界全体で、1位「科学技術の進歩による生活の質の向上」50.2%(2021年度比3.2%増)、「教育の質の向上」49.9%(同4.6%増)、「医療や福祉の促進」43.9%(同4.9%増)を実感しており、上位3項目は2021年度と変わらなかった。一方、「戦争や紛争が減った」と実感した者の割合は24.0%(同13.1%減)となったが、中でも東欧・中央アジア22.2%(同17.8%減)と日本17.4%(同27.4%減)の反応が顕著であった。(グラフ6-1ならびにグラフ6-2の通り)

日本では、トップが「医療や福祉の促進」57.0%(同12.6%増)、「科学技術の進歩による生活の質の向上」43.0%(同16.2%増)と「国際交流・国際協力の促進」43.0%(同5.3%増)が同率2位に、4位は「教育の質の向上」35.2%(同4.5%減)。前述の通り、2021年度トップの「戦争や紛争が減った」は5位に大幅後退した。(グラフ6-2の通り)

地域別で一番多かった回答は、アジア・大洋州、中南米、アフリカが「科学技術の進歩により生活の質が向上した」でそれぞれ50.8%(同4.3%増)、48.5%(同1.1%増)、55.8%(同5.7%増)、北米・西欧が「医療や福祉が促進された」53.7%(同18.4%増)、東欧・中央アジアと中東が「教育の機会が増えた/教育の質が高まった」でそれぞれ54.2%(同7.3%増)、46.8%(同5.6%減)であった。
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Q6-世界
グラフ6-1)世界(2021年度と2022年度の比較)各項目を選んだ者の割合

Q6-日本
グラフ6-2)日本(2021年度と2022年度の比較)各項目を選んだ者の割合

世界全体、日本共に「戦争や紛争をなくすこと」が世界平和に向けた最重要課題に

問7:世界が平和になるために、解決しなければならない重要な課題は何だと思いますか。(3つまで選択可)

世界全体では、解決しなければならない重要な課題として、2021年度2位の「戦争や紛争をなくすこと」が最重要課題となり55.0%(昨年度比13.1%増)、2位「人権の抑圧や差別をなくすこと」49.3%(同5.0%減)、3位「貧困や飢餓をなくすこと」38.6%(同0.5%増)と続く。(グラフ7-1の通り)

回答率が増加した項目は「核兵器および原子力発電を廃絶すること」で12.1%(同2.4%増)、なかでも東欧・中央アジアでは15.5%(同4.1%増)に。(グラフ7-1の通り)

また、「各国の政情が安定し、国際協力が進むこと」30.0%(同1.1%減)や「気候変動や自然災害への対策を行うこと」20.4%(同0.7%減)は、2021年度と同様の結果であったが、教育や経済格差、環境、健康の重要度はやや下がる傾向が見られた。(グラフ7-1の通り)

日本については、「戦争や紛争をなくすこと」が68.9%(2021年度比12.8%増)と世界全体、全地域と比較して、最も高い数値となった。(グラフ7-2の通り)

地域別に見ると、「戦争や紛争をなくすこと」は、中東では、2021年度に続き、最重要課題60.3%(同0.5%増)となった。中南米を除く4地域でも、9.6%(北米・西欧)~15.4%(アフリカ)の大幅な上昇を見せた。
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Q7-世界
グラフ7-1)世界(2021年度と2022年度の比較)各項目を選んだ者の割合

Q7-日本ss
グラフ7-2)日本(2021年度と2022年度の比較)各項目を選んだ者の割合

自分の国は平和な方だと「思う」はオーストラリア、フィジー、ザンビアが同率トップ、「思わない」トップはミャンマー。日本は9割近くが「思う」と回答

問8:自分の国は諸外国と比べて平和な方だと思いますか。

世界全体で、自分の国は諸外国と比べて平和な方だと「思う」41.5%(2021年度比1.3%増)、「思わない」42.4%(同2.9%増)で、2021年度とほぼ同率であった。(グラフ8-1-1ならびにグラフ8-1-2の通り)

日本は「思う」87.8%(0.9%減)、「思わない」2.2%(同0.1%増)という結果であった。(グラフ8-2-1ならびにグラフ8-2-2の通り)

そのほか目立った変化として、東欧・中央アジア、中東では「思う」の割合がそれぞれ61.6%(7.7%増)、21.8%(同7.4%増)に、逆にアフリカでは「思わない」の割合が59.5%(同15.3%増)に。

国別に見ると、「思う」のトップはオーストラリア、フィジー、ザンビアで、当該国の回答者全員が「思う」と回答。4位シンガポール(95.5%)、5位マラウィ(94.1%)の順。日本は10位(87.8%)。(表8-1の通り)

一方、「思わない」のトップはミャンマー(93.2%)。2位コンゴ民主共和国(92.9%)、3位ナイジェリア(80.9%)、同率4位のベネズエラ、コロンビア(共に80.0%)と続く。(表8-2の通り)
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Q8-2021_世界
グラフ8-1-1)世界(2021年度)
Q8-2022_世界
グラフ8-1-2)世界(2022年度)
Q8-2021
グラフ8-2-1)日本(2021年度)
Q8-2022
グラフ8-2-2)日本(2022年度)
表8-1)「思う」と答えたトップ10の国(2022年度)*回答者10人以上のみ対象
順位 国名 その国の回答者に占める割合
1位 オーストラリア 100.0%
フィジー 100.0%
ザンビア 100.0%
4位 シンガポール 95.5%
5位 マラウイ 94.1%
6位 ブータン 92.9%
7位 ベトナム 91.3%
8位 モロッコ 90.9%
9位 ウズベキスタン 90.0%
10位 日本 87.8%
表8-2)「思わない」と答えたトップ10の国(2022年度)*回答者10人以上のみ対象
順位 国名 その国の回答者に占める割合
1位 ミャンマー 93.2%
2位 コンゴ民主共和国 92.9%
3位 ナイジェリア 80.9%
4位 ベネズエラ 80.0%
コロンビア 80.0%
6位 エチオピア 75.0%
7位 アルメニア 73.9%
8位 トルコ 66.7%
9位 スリランカ 66.7%
10位 南アフリカ 64.3%

2021年度と同様に、平和でない国の重要課題は「戦争と紛争をなくす」「人権と自由を守る」「政情が安定し、治安を守る」に集中

問9:あなたの国がもっと平和になるために、解決しなければならない最も重要な課題(自国に関して)は何だと思いますか。

自国がもっと平和になるために、解決しなければならない最も重要な課題は、世界全体では「政情が安定し、治安を守ること」15.1%(2021年度比0.5%減)、「人権と自由を守ること」14.7%(同2.1%増)、「男女の不平等など、あらゆる差別や偏見をなくすこと」13.5%(同1.6%減)を選ぶ者が多かった。(グラフ9-1の通り)

日本では、2021年度と同様に、「男女の不平等など、あらゆる差別や偏見をなくすこと」が大差をつけて最重要課題に挙げられた。(グラフ9-2の通り)

上位3項目について、回答者が占める割合に基づく上位3カ国を並べたところ、興味深い結果となった。

  • 「政情が安定し、治安を守ること」:1位ベネズエラ(50.0%)、2位スリランカ(46.7%)、3位ケニア(40.0%)
    (表9-1-1の通り)
  • 「人権と自由を守ること」:1位ポーランド(35.1%)、2位ミャンマー(31.1%)、3位トルコ(27.8%)
    (表9-1-2の通り)
  • 「男女の不平等など、あらゆる差別や偏見をなくすこと」:1位韓国(58.3%)、2位日本(35.2%)、3位ポーランド(35.1%)
    (表9-1-3の通り)

上位3項目以外を見ると、北米・西欧では「経済格差や雇用の問題をなくすこと」16.7%(2021年度比6.3%増)、中南米では「社会における、あらゆる形の暴力をなくすこと」20.3%(同3.5%増)および「質の高い教育をみんなに提供すること」14.9%(同3.9%減)、東欧・中央アジアおよび中東では「戦争や紛争をなくすこと」がそれぞれ13.9%(同7.1%増)、17.3%(同3.2%減)、アフリカでは「貧困や飢餓をなくすこと」13.1%(同0.7%増)も上位に。

なお、問8で自国を平和な方だと「思わない」と回答した者の多かった国の重要課題は「戦争と紛争をなくすこと」「人権と自由を守ること」「政情が安定し、治安を守ること」に集中した。(表9-2の通り)
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Q9-世界
グラフ9-1)世界(2021年度と2022年度の比較)

Q9-日本
グラフ9-2)日本(2021年度と2022年度の比較)
表9-1-1)「政情が安定し、治安を守ること」と答えた回答者の割合トップ10の国(2022年度)*回答者10人以上のみ対象
    順位        国名    その国の回答者に占める割合
1位 ベネズエラ 50.0%
2位 スリランカ 46.7%
3位 ケニア 40.0%
4位 ネパール 38.9%
5位 エクアドル 35.7%
6位 タイ 33.3%
7位 ジンバブエ 27.3%
8位 ナイジェリア 24.6%
9位 パキスタン 24.0%
10位 モルディブ 23.8%
表9-1-2)「人権と自由を守ること」と答えた回答者の割合トップ10の国(2022年度)*回答者10人以上のみ対象
    順位        国名    その国の回答者に占める割合
1位 ポーランド 35.1%
2位 ミャンマー 31.1%
3位 トルコ 27.8%
4位 エルサルバドル 27.3%
5位 ウガンダ 25.7%
6位 中国 25.0%
7位 ナイジェリア 24.1%
8位 バングラデシュ 22.0%
9位 コンゴ民主共和国 21.4%
キルギスタン 21.4%
表9-1-3)「男女の不平等など、あらゆる差別や偏見をなくすこと」と答えた回答者の割合トップ10の国(2022年度)*回答者10人以上のみ対象
    順位        国名    その国の回答者に占める割合
1位 韓国 58.3%
2位 日本 35.2%
3位 ポーランド 35.1%
4位 オーストラリア 29.4%
5位 南アフリカ 28.6%
6位 カメルーン 27.3%
フィジー 27.3%
イラン 27.3%
9位 マレーシア 25.6%
10位 米国 25.0%
表9-2)問8で自分の国は諸外国と比べて平和な方だと「思わない」と答えたトップ10の国と各国の最も重要な課題(2022年度)
    国名    最も重要な課題 その国の回答者に占める割合
アフガニスタン ⼈権と⾃由を守ること 31.1%
コンゴ民主共和国 戦争や紛争をなくすこと 57.1%
ナイジェリア 政情が安定し、治安を守ること 24.6%
ベネズエラ 政情が安定し、治安を守ること 50.0%
コロンビア ⼈権と⾃由を守ること
政情が安定し、治安を守ること
20.0%(最重要課題が同率)
エチオピア 貧困や飢餓をなくすこと 24.0%
アルメニア 戦争や紛争をなくすこと 43.5%
トルコ ⼈権と⾃由を守ること 27.8%
スリランカ 政情が安定し、治安を守ること 46.7%
南アフリカ 男⼥の不平等など、あらゆる差別や偏⾒をなくすこと
社会における、あらゆる形の暴⼒をなくすこと
28.6%(最重要課題が同率)

8割強の若者が日常的に平和について周りの人と話す

問10:平和について周りの人と話すことはありますか。

平和について周りの人と話すことが「よくある」37.5%(2021年度比4.8%増)、「時々ある」45.2%(同1.6%減)と答えた者の合計が世界全体で82.7%(同3.2%増)、「ほとんど/全くないが、話してみたいと思う」10.9%(同1.8%増)も含めると93.6%(同5.0%増)となり、作文コンテスト参加者は平和について話す機会が多く、平和への関心度が高いことを示している。(グラフ10-1の通り)

日本では、「よくある」15.6%(2021年度比5.6%増)、「時々ある」49.6%(同0.6%減)の合計が65.2%(同5.0%増)となり、「ほとんどないが、話してみたいと思う」21.1%(同12.7%増)も含めると86.3%(同17.7%増)と大幅な増加が見られた。(グラフ10-2の通り)

地域別では、アフリカが「よくある」、「時々ある」を合わせて最も多く91.3%(同1.0%増)、中でも「よくある」が54.2%(同3.3%増)と他地域と比べて突出しており、平和が若者たちの日常的な話題であることが浮き彫りになった。

また、問8で自分の国は諸外国と比べて平和な方だと「思わない」と回答した国々の若者は、「よくある」「時々ある」の割合が平均して高く、88.8%であったのに対し、「思う」と答えた国の平均は72.1%であった。(グラフ10-9ならびにグラフ10-10の通り)
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Q10-世界
グラフ10-1)世界(2021年度と2022年度の比較)

Q10-日本
グラフ10-2)日本(2021年度と2022年度の比較)

Q10-世界2
グラフ10-9)問8の国別「思わない」上位10カ国の平和について話すことが「よくある」「時々ある」と回答した割合(2022年度)

Q10-日本2
グラフ10-10)問8の国別「思う」上位10カ国の平和について話すことが「よくある」「時々ある」と回答した割合(2022年度)

2021年度と同様に、平和な人間関係を重視し、「他人への思いやり」や「話し合いでの問題解決」などを実践

問11:平和のためにやっていること、またはやってみたいことはありますか。(当てはまるものをすべて選んでください)

2021年度と同様に、世界全体では、「他人に対して思いやりを持つ」74.8%(前年度比1.3%減)、「人との争いを避け、話し合いで解決する」70.1%(同0.1%減)、「人に迷惑をかけず、人の役に立つことを心がける」64.9%(同2.4%減)が上位を占めた。これらは、世界の若者たちが大切にする普遍的な価値観と言える。(グラフ11-1の通り)

日本では、「みんなと仲良くし、いじめをなくす」48.9%(同2.1%減)が3位に。「環境保護に協力する」44.4%(同5.5%増)、「平和運動に参加する」28.1%(同7.2%増)、「選挙の投票に行くなど、政治に関心を持つ」44.8%(同5.9%増)も、高い伸び率を見せるなど、行動を伴う項目で変化が見られた。(グラフ11-2の通り)

また、上位項目の中で、東欧・中央アジアでは「他人に対して思いやりを持つ」と「人との争いを避け、話し合いで解決する」がそれぞれ同率の66.9%(同5.2%減)、66.9%(同5.4%減)、中東では「人に迷惑をかけず、人の役に立つことを心がける」67.3%(同0.4%減)、アフリカでは「人との争いを避け、話し合いで解決する」75.1%(同7.4%増)を最も重視していた。
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Q11-世界
グラフ11-1)世界(2021年度と2022年度の比較)各項目を選んだ者の割合

Q11-日本
グラフ11-2)日本(2021年度と2022年度の比較)各項目を選んだ者の割合

2021年度と同様に、平和に貢献するためには「教育や学びの場」「自分の意見を発表するチャンス」「同世代とのつながり」の必要性を認識

問12:平和に貢献するために、あなたにとって必要なものは何ですか。(当てはまるものをすべて選んでください)

平和に貢献するために必要なものは何か、当てはまる回答をすべて選んでもらったところ、2021年度と順位は変わらず、世界全体では、1位「教育、学びの場」76.6%(前年度比0.1%増)、2位「自分の意見を発表するチャンス」67.6%(同1.7%減)、3位「同じような思いを持った同世代の人とのつながり」67.1%(同1.4%減)、4位「金銭的な援助」53.1%(同1.8%増)、5位「先駆者とのつながり」45.4%(同0.2%増)という結果になった。(グラフ12-1の通り)

日本では、「同じような思いを持った同世代の人とのつながり」「先駆者とのつながり」が、それぞれ59.6%(同8.1%増)、37.8%(同8.1%増)と伸びを見せ、「自分の意見を発表するチャンス」も56.3%(同4.8%増)となった。(グラフ12-2の通り)

地域別で見る比較的高い伸び率の項目は、「安定した仕事・雇⽤」を必要とする者の割合が、北米・西欧で50.9%(同8.1%増)、中南米で43.3%(同5.3%増)に、「金銭的な援助」が東欧・中央アジアとアフリカではそれぞれ52.8%(同5.9%増)、60.7%(同6.1%増)に。「先駆者とのつながり」はアフリカで52.1%(同7.3%増)であった。
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Q12-世界
グラフ12-1)世界(2021年度と2022年度の比較)各項目を選んだ者の割合

Q12-日本
グラフ12-2)日本(2021年度と2022年度の比較)各項目を選んだ者の割合

終わりに

本調査では、世界の若者の平和についての意識の傾向を概観するため、以下のねらいをもって問いを立て、アンケートを構成しました。

問2では自分の心の平和から、家族、学校・地域、国、人類、地球の平和に至るまで、平和を考える際の意識の広さを探りました。

問3では過去を振り返り、問4では現在を観て、問5では未来を展望し、世界の平和に向けた推移を、どのように捉えているかを見ました。

問6では世界が良くなった点、問7では未だ解決しなければならない点は何かを尋ね、若者の問題意識を探りました。

また、問8・問9では自国に関して、どのような認識をもっているかを尋ね、特に自分の国は平和ではないと思っている国の若者が課題だと感じていることを聞き取りました。

問10・問11では若者たちの平和意識が、どのような行動に現われているかを探り、問12では彼らが平和に貢献するために必要だと感じているものは何かを聞き取りました。

当財団では、引き続き、世界の若者たちの声に耳を傾け、平和の担い手である子どもや若者たちへの支援に取り組んでまいります。

本調査結果が各国の政策決定者をはじめ教育関係者、青少年支援団体など、様々な方に有益なリソースとしてご活用いただけるよう願っています。

ダウンロード

2022年度「平和に関する世界の若者の意識調査」(完全版)
2022年度「平和に関する世界の若者の意識調査」(アンケートフォーム)

参考

2021年度「平和に関する世界の若者の意識調査」アンケート結果

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TEL: 03-3265-2071(9:00~17:00 土日祝日を除く)
Eメール : info@goipeace.or.jp
公益財団法人 五井平和財団「平和意識調査」事務局