【開催報告】高校生・大学生対象イベント「ローカルSDGs キャンパス・ミーティング」 @福岡・三重・宮城

概要

令和4年3~4月、高校生と大学生を対象に、地域でのSDGs達成に向けた学びを深めることを目的に、「ローカルSDGsキャンパス・ミーティング」を、福島県(オンライン開催)、沖縄県沖縄市、岡山県倉敷市で、順次開催しました。

地域資源を活かして新たな価値を創造し、モノづくりで地域の活性化や持続可能な未来づくりに貢献している各地域のソーシャルイノベーターの方々から、循環経済に不可欠な生産や消費のあり方など、多くを学びました。

沖縄と岡山の各会場では、プログラム終了後、交流の時間が設けられ、参加者たちは講師や他の参加者、オブザーバーらと交流を深めました。

ローカルSDGs(地域循環共生圏)とは、各地域が足もとにある地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し支え合うことにより、環境・経済・社会が統合的に循環し、地域の活力が最大限に発揮されることを目指す考え方であり、地域でのSDGsの実践を目指すものです。環境省ローカルSDGsサイト

主催 公益財団法人 五井平和財団
後援 環境省、文部科学省、日本ユネスコ国内委員会、公益財団法人 ユネスコ・アジア文化センター、公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟、特定非営利活動法人持続可能な開発のための教育推進会議(ESD-J)、ESD活動支援センター、宮城県、三重県、福岡県、宮城県教育委員会、三重県教育委員会、福岡県教育委員会、仙台市、北九州市、仙台市教育委員会、北九州市教育委員会、東北地方ESD活動支援センター、中部地方ESD活動支援センター、九州地方ESD活動支援センター
協力 株式会社On-Co、北九州ESD協議会

福岡会場「生ごみで食の循環を生み出す」

講師:たいら 由以子氏 ローカルフードサイクリング株式会社代表/NPO法人循環生活研究所理事/34日(土)

たいら由以子氏が、父親の病気をきっかけに栄養学や健康について学んだ結果、日々の暮らしと土の改善につながる生ごみに着目し、コンポストの普及に取り組んできたライフストーリーを語りました。

たいら氏は、約90%もの水分を含む生ごみの焼却処理に年間約1兆円の税金が使われているだけでなく、CO2排出を通じて地球温暖化の加速につながる点などを指摘。

自身が提唱・実践する、生ごみを堆肥にして土に戻し、そこで野菜を育てるという「半径2km圏内での栄養循環」や、独自開発した、誰もが各家庭で手軽に取り組めるバッグ型コンポストを使った「たのしい循環生活」について、地域の菜園を核としたコミュニティづくりなどの事例を交えながら、紹介しました。

最後に「一人一人の意識が変われば社会が変わる。今日学んだことを周りの人たちに発信してほしい」などと参加者たちに呼びかけました。

参加者からは「地球温度化へのアプローチの仕方を学べた。出来ることから始めようと思う」「初めて知った生ごみコンポストを学校や家など、身近な人に教えていきたい」「自分たちでもコンポストが出来ると分かったので、早速やってみよう思う」などの感想が聞かれました。

三重会場「サカサマの発想で人と空き家の課題を解決する」

講師:水谷 岳史氏 株式会社On-Co代表取締役/庭師/3月12日(日)

水谷岳史氏が、高校生活やカナダ留学を通じて「人と違うことや世の中に未だ無いことがしたい」という想いが強まり、仲間たちと共に、空き家を借りて改修しシェアハウスとして貸したり、借り手の「やりたい想い」を可視化し、家主を見つけてつなぐ「さかさま不動産」というマッチングサービスに、全国で取り組んできた経験を語りました。

また、名古屋市内の新たな物づくり拠点をベースに、若手クリエーター等がコーヒー豆の絞りかすや廃棄された建材などから新たな商品を作るアップサイクルの取り組みも紹介し、参加者たちは常識を覆す様々な実践の話に、熱心に聞き入っていました。

水谷氏は、最後に「自分の信じた道に進んでいってほしい」と参加者たちにエールを送りました。

参加者からは「社会一般で言う利益を追い求めるのではなく、やりたいことや社会課題に着目して仕事をしている姿はかっこいい。自分もやりたいことが、多くの人にとって良いことになるような仕事をしたい」「逆転の発想を大事にする、物事の本質を見抜くことが大切と感じた」「どのように人を巻き込んだら、やりたいことを形にしていけるか知れてよかった」などの感想が聞かれました。

宮城会場「森・海・人をつないで地域の明日をつくる」

講師:立花 貴氏 公益社団法人MORIUMIUS代表理事/3月18日(土)

立花貴氏が、東日本大震災直後から、東京から宮城に週2回通い、延べ約1,300人の仲間と共に行った10万食の炊き出し活動や、石巻市雄勝町の人々との出会いをきっかけに同市に移住し、地元住民との信頼関係を築きながら新たな地域づくりに取り組む中で出会った築約100年の廃校を約5千人の国内外のボランティアらと共に改修し、複合体験施設MORIUMIUSとしてオープンさせ、子ども対象の「自然と共に生きる暮らしを体験する」プログラムや企業・行政向け研修プログラムの実施を通じて、多くの関係人口を生み出してきた経験、都会からの長期の漁村留学の受入れや、災害危険区域でのオリーブやブドウの栽培を通じた雇用創出などの新たな取り組みについて、紹介しました。

立花氏は、参加者たちに「しない後悔よりする後悔の方が大きい。自分のありたい未来の問いを立てる力や共感を大切にしながら、みんなもいろいろなことにチャレンジしてほしい」と語りかけました。

参加者からは「失敗を恥ずかしがらず自分の気持ちに正直に行動できるようになりたい」「自然を大切にしながら雇用を生み出し、地域の人々と共にまちづくりをする様子に魅力を感じた」「SDGsで大切なのは行動し続けることだと分かった」などの声が聞かれました。

3会場共通トーク「私たちの生活とSDGsの関係を考える」

講師:河野晋也氏 大分大学教職大学院 准教授

5-河野先生s

各会場の講師のトークを受け、河野晋也氏が、SDGsをそれぞれの実践事例や身近なトピックと結び付けながら、解説しました。

持続可能な開発とは「未来の人たちと現代の私たちのために、環境を大切にし、仲間外れをせず、豊かでくらしやすい社会にすること」。

河野氏はSDGsの本質を平易な言葉で表現しつつ、身の回りにSDGsを取り入れる仕掛けを考えるワークの時間では、身近な生活の中には、たとえロゴなどの目に見える形で表現されていなくても、SDGs達成につながる様々な工夫があることを、レジ前の混雑解消のための立ち位置の表示や電気の無駄遣いを減らすための音の出る仕掛けなどを例に挙げながら、紹介しました。参加者たちも各々にそのような仕掛けを考えました。

河野氏は、各会場の参加者たちに「人々の意識や価値観が変われば行動が変わる。皆さんも、ぜひ人が自然に良い方向に向かって行動するような仕掛けを考えてほしい」などと語りかけました。

参加者からは「自分たちで問題や解決策を考えて、みんなで共有することで、自分が考えもしなかった発想に出会うことが出来た」「いつの間にかサステナブルな行動に人を導くという話が凄く印象的だった」「自分が目指しているものは何か、どうしたら社会のためになるか、最終的なビジョンを明確にしようと思った」「SDGs達成に向けて、人々の意識改革の一助となる行動を起こしていきたい」などの感想が聞かれました。

参加者の感想(抜粋)

  • 自分が今できることから始めていこうと思う。まず知ることから始め、そこから多くの人にSDGsの活動について発信していきたい。
  • 様々な物の見方や視点があることを再確認できたし、視野の広さの重要性を強く感じた。
  • SDGsと聞くと規模の大きい遠い話に聞こえてしまいがちだが、個人でも出来ることがあることがわかったので、日常生活から行動していこうと思う。
  • まずはSDGsという言葉に触れる機会が必要で、それにはこのようなイベントに参加するという行動が必要だと実感した。勇気を出して参加してよかった。
  • 初めてグループワークに参加したが、普段中々話し合わないトピックについて、年の近い参加者たちからいろいろなアイディアを聞けてモチベーションが上がった。
  • 自分だけでは見方や考え方が偏って行き詰まり、思考が停止してしまうこともあるので、人と共有する、共感するということが大切だとわかった。

キャンパス・ミーティングの講師陣(敬称略)

たいら 由以子

たいら 由以子(たいら ゆいこ)

ローカルフードサイクリング株式会社代表/NPO法人循環生活研究所理事

父親の病気をきっかけに、1998年、日々の暮らしと土の改善をつなぐ、生ごみを利用したコンポストの普及を仲間とスタート。2020年には株式会社を設立し、都市のベランダでできるトートバッグ型のLFCコンポストを開発し普及を促進する。半径2㎞圏内での栄養循環を目指して、多様なセクターと連携し幅広く活動している。
ローカルフードサイクリング株式会社サイト
NPO法人循環生活研究所サイト


水谷 岳史

水谷 岳史(みずたに たけふみ)

株式会社On-Co代表取締役/庭師

高校時代から商店街活性化や飲食・音楽のイベント企画に携わる。家業の造園業に従事し、デザインなどのスキルを習得。同時に空き家を活用したシェアハウス等を数軒運営。ライフデザインやコミュニティ形成に取り組む。最近では都市部とローカル(山村・漁村)の特徴を捉え、関わる人の主体性を上げる企画を多数創出。誰もが自由に挑戦と失敗ができる社会を目指して実証実験を続けている。
株式会社On-Coサイト


立花 貴

立花 貴(たちばな たかし)

公益社団法人MORIUMIUS 代表理事

東日本大震災後、地元宮城に戻り石巻市雄勝町住民やボランティアのべ5千人とともに廃校を改修。2015年7月こどもたちが循環する暮らしを体験する複合体験施設MORIUMIUS(モリウミアス~森と海と明日へ~)をオープン。地域資源をいかしながら、こどもの学びと共に豊かなまちづくりを目指す。平成26年度「ふるさとづくり大賞(団体の部)」総務大臣賞、他受賞多数。
公益社団法人MORIUMIUSサイト

SDGsナビゲーター

河野 晋也

河野 晋也(こうの しんや)

大分大学 教育学研究科 教職開発専攻(教職大学院)准教授

奈良県出身。小学校教諭在職中は、社会科や総合的な学習の時間を中心に、地域の課題やSDGs、歴史文化遺産を題材とした授業実践に取り組む。2020年からは大分大学教育学研究科に移り、小学校教諭の経験を活かして教員養成に取り組む一方、SDGsに関する講演や、学習者の価値観の変容を促すESDについて研究を行っている。

ダウンロード

「ローカルSDGsキャンパス・ミーティング2023年3月」開催報告PDF

その他開催報告

「ローカルSDGs ユース・ダイアログ」@岡山・滋賀2021 開催報告
「ローカルSDGs ユース・ダイアログ」@長野・北海道2022 開催報告
「ローカルSDGs ユース・ダイアログ」@福島・沖縄・岡山2022 開催報告