作文コンテストの受賞者たちによるウェビナー公開中

2000年度以来、毎年、五井平和財団が青少年教育プログラムの一環で実施してきた国際ユース作文コンテストが、今年で20年目を迎えました。この間、190近い国と地域から、延べ15万人を超える子どもや若者たちが自らの内面に迸る思いや体験などを作文にまとめ、応募してくれました。

この度、20周年を記念する特別企画として、過去の受賞者たちが月替わりで社会的なテーマについてオンライン上で語り合う、ウェビナー・シリーズがスタートしました。

6月の初回は、本年度の作文コンテストのテーマにちなんで「優しさ」について語り合ってもらいました。より良い社会のために、高い志を持って活動し、成長し続ける4人の歴代受賞者たちが経験やビジョンを元に語った言葉の一部を紹介します。

あなたが思う「優しさ」とは(6月ウェビナーより)

4人の参加者は、モルドバのミハイ・ブルンチウクさん(2005年受賞/28歳)、フィリピンのアナ・エリカーニョ=シールズさん(2007年受賞/36歳)、バングラデシュのアンジャリ・シャルカルさん(2012年受賞/28歳)、ルワンダのロジャース・キムリさん(13年受賞/30歳)。

まず、「優しさ」とは何かという問いについて、ブルンチウクさんとシャルカルさんは、「一切の見返りを期待せずに、他人のために何かをしてあげること」、エリカーニョさんは「周りの人々の負担をどうすれば軽減してあげられるか常に意識すること」、キムリさんは「優しさの対象には人間だけでなく、全ての生態系が含まれることを忘れてはならない」と、それぞれに深い洞察を語ってくれました。

現在、ブルンチウクさんは、自国の国税庁に勤務する傍ら大学の教壇にも立ち、クリスマスなどの年中行事には、国税庁の同僚に声をかけ、孤児の支援活動を行っています。「子どもたちの笑顔が喜びであり、その喜びを同僚たちと分かち合えることで喜びはさらに膨らみ、活動の原動力になっています」と、見返りを求めない自らの実践について話してくれました。

若者や女性の問題に取り組む社会起業家のシャルカルさんからは、「現代社会は、ビジネスでも個人の生活でも、自分が手に入れられるものを最大化しようと努力します。しかし、私は、貧困や問題を抱える少女たちを相手に仕事をする中で、たとえ直接問題の解決につながらずとも、相手を大切に思い、愛し、その人のために時間を割くことが本当の優しさだと思います」と、ディスカッションが深まる言葉が紡がれました。

また、一児の母になり、優しさについて深く考えるようになったという世界銀行職員のエリカーニョさんは、「優しさは波紋のように広がり、増幅していくものだと思います。思い出すのは、2013年にフィリピンを巨大台風『ハイエン』が襲った時のことです。当時、タイに勤務していた私は、死者推定1万人の大災害を前に、何の経験もないまま、バンコクの駅頭で募金を呼びかけました。異国への募金活動が珍しかったのか、マスコミでも報道され、支援の申し出が殺到する結果になりました」と、母国への思いが社会にインパクトをもたらす結果になった体験を共有してくれました。

そして、ルワンダで傷ついた人々の心を癒すセラピーや平和構築をテーマに活動するNGO創設者のキムリさんは、「私たちが理解すべきは、社会のどんなコミュニティでも優しさは最上位に来るべき概念ということです。大切なのは自分から優しさを現すことです。そう思える理由は、私自身がたくさんの優しさを受けてきたからです。だから周りに優しさを広げていきたいし、皆に優しさを現すことをためらうのは止めようと言いたいです」と、言葉に力を込めました。

一人一人の小さな優しさの積み重ねが、社会を変える大きな原動力につながることが示される機会となりました。

ウェビナービデオを見る(英語のみ)

2019年7月ウェビナー概要

ジョージアのケテェヴァン・カンデラキィさん(2001年受賞/37歳)、ルワンダのロジャース・キムリさん(2013年受賞/30歳)、ボスニア・ヘルツェゴビナのネダ・シミッチさん(2017年受賞/14歳)の3名が登場し、「ポスト紛争社会における平和構築と和解」というテーマで、母国が経験した民族大虐殺や紛争・戦争の悲惨な歴史を振り返りつつ、これまで紛争で深く傷ついた人々がどのように和解の道を模索してきたか、またそれぞれの平和な社会実現に向けたビジョンや日々の取り組み、若者たちの役割などについて、熱く語り合いました。

2019年8月ウェビナー概要

ルーマニアのルシアーナ・グロスさん(2006年/31歳)、フィリピンのアナ・エリカーニョ=シールズさん(2007年受賞/36歳)、バングラデシュのアンジャリ・シャルカルさん(2012年受賞/28歳)の3名が登場し、「ジェンダー(社会的・文化的性差)の平等に向けて」というテーマで、それぞれが生まれ育った社会や職場などでの女性差別の実態や自らの体験談、またジェンダー間の不平等を克服するために男性、女性の双方に求められる意識変革、若者たちの果たすべき役割など、幅広い話題について、活発に語り合いました。

2019年9月ウェビナー概要

カナダのアダム・モスコーさん(2006年受賞/26歳)とバングラデシュのアンジャリ・シャルカルさん(2012年受賞/28歳)が「平和をつくる力としての宗教」というテーマで、それぞれユダヤ教徒、ヒンズー教徒の立場から、宗教の叡智や日々の実践を通じた平和の創造について、深い対話を交わしました。

2019年10月ウェビナー概要

ルーマニアのルシアーナ・グロスさん(2006年/31歳)、アメリカのナラヤン・クルカルニさん(2015年受賞/23歳)、ネハ・ラワットさん(2017年/25歳)の3名が登場し、「辛い経験を人のために役立つ機会に変える」というテーマで、友人たちからのいじめや差別、言葉の暴力、うつや孤独等、それぞれの人生において最も辛かった体験をどう乗り越え、そこから何を教訓として学んだのか、語り合いました。

2019年11月ウェビナー概要

二つの異なる文化圏に暮らす、ロシアのアンジェリーナ・シュリャコバさん(2010年/19歳)とアメリカのナラヤン・クルカルニさん(2015年受賞/23歳)が、「今日のポストモダン社会における『家族』の概念」というテーマで、家族の意味や家族生活で大事にしていること、祝祭日や特別な行事の過ごし方、家族内での様々な問題への対処法などを、自らの体験談を交えて語り合ったほか、「地球の家族」である視聴者に向けてメッセージを発信しました。

毎月のテーマ

各ウェビナーは、本サイトの英語ページ内の動画でご覧いただけます。